2日目 カフェ④
彼曰く、私も運転には気を付けます。
***
カフェにて、いつもと違う席でのこと。
進入禁止の場所に入ってきた黒のアルファード。
後ろをぴったりとついてくるパトカーに呼び止められて路上に停止。
のそのそと出てきた警察官二人はずんぐりとしていてまるでクマのよう。
青い制服が聖域の守護者みたいな高貴さを帯びていて、周りの人が圧倒されているような雰囲気だった。
実際にはそんなことないんだろうけど、なんだか目が離せなかった。
二言三言、アルファードの運転手と言葉を交わした後に誘導して路傍に停止させる。一つ一つの行動が黒い塊を監視しているようで油断がない。
いそいそと出てくる運転手は先ほどの警察官と同じくらいの年齢に見えるのに、全く別の生き物みたい。
両手を軽く体の前で握ってパトカーに寄っていく姿は、悪いことをしたことがばれて母親に叱られるのを覚悟した次男みたいだった。
何故次男と感じたかはわからない、直感。
でも何となく次男っぽさがにじんでいたから、多分あの運転手は次男だと思う。
身振り手振りで何やら話す警察官にテンポよく細かくうなずく次男。
話の内容がわからないカフェ店内からではただリズムをとっているようにしか見えないのがどこかおかしかった。
「このロータリーはバスとか、関係車両だけが通行可なんですよ。商店街も多いんでね。休日だろうとバスはひっきりなしに動いてるんで、別の車が入ってくると混乱して危ないんですよ。まあわかります、西口側から東口側に行こうとすると遠回りですし、信号も多いし、人が多いんで標識見逃しがちですから。間違える人多いんですよ。よくあるんです、この駅前は。僕の父も間違えたことあります、ええ。でも間違いは間違いですから、切符は切らせてもらいますね、すいません。免許証も控えたんで、また間違えないように気を付けてくださいね。とりあえず書くものが終わるまで待っててもらって、僕らがいくまで動かんでくださいね。見てわかる通り道路横切る人多くて危ないんで。僕らが誘導してきた道戻ってもらいます。駅の反対側行きたかったら商店街の区画をぐるりと回ってもらえば行けますから。でもロータリーは入れないんで、もう一回言っておきますけど。反対側にも交番あるんで、気を付けてくださいね。ごめんなさいね、わかりづらくて。大丈夫そうですかね?」
「はい、すいません、わかりました、ほんとすいません」
次男の前で繰り返し腕を行ったり来たりさせて説明させる間ずっと一定間隔で頷いているのを見ているとそんなやり取りを思い浮かべてしまった。
まあ、私も一回間違えてますし?笑ってみていられないんですけど。
別れ際は険悪ではなく、軽く笑いあってそれぞれの車に戻っていく3人に平和を感じました。
いつもと違う席に座るといろんな発見があるなぁと感じた、休日の昼下がりのなんでもない話。
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