5日目 朝ごはん
彼曰く、これでいい、これがいい。
***
朝になっても起きれない日々が続く。
理由は単純、仕事に行きたくないなと感じてしまうから。
特段強い感情なわけではない。
いつも感じることだ。
大変な仕事を厭うわけでもなく、かといって面倒なことを積極的にやっつけてしまおうともしない。
慣れきってしまった大変さにただ身を任せて、仕事に振り回される日々。
つまりは疲れてしまったわけだ。
疲れると体は動くことを拒否する。
普段通りの布団の中で、自然と目が覚めて時計を見る。
まだ目覚ましもなっていない、暗い部屋の中でぼんやりと視線を巡らせてふと思うのだ。
あ、今日は何もしたくないな
何かを拒否するとき、新しいことをするのは負担になる。負担を体に強いることは精神的にも危ないということを知っている。
長くない社会人生活の中で自分を守るすべは自分に降りかかる火の粉をいかに避けて通るかだと知った。
狭い世界でも、平和な世界とは限らない。
狭い世界だからこそ、関係の薄いものでも自分の出来事になってしまう。
そんな世界で自分の領域を守って生きるのは、ただただ疲れるのだ。
大変な思いをしても届かない夢ばかり。
絵描きになりたい、スポーツマンになりたい、有名になりたい。
どれだけ希望を募ったところで動かないことには始まらない。
そして今日も思うだけ。
夏の夜の夢のように、はかなく終わる一人きりの夢舞台。
夢想して終わる世界のなんと平和なことか。
動きたくないときでもお腹は空く。
私が食い気ばかりであることは置いておいて、これは普通のことなのだ、と最近思う。
最近は朝起きると温かいものが食べたくなる。
白湯がいいのは話に聞いていたけど、個人的ブームはコンビニの生姜スープ。
野菜とほぐし肉も入っているから何となく健康的じゃなかろうか。
寝ぼけた頭で何もしたくないと何をしようかを交互に考えて、電子レンジの音に目が覚める。
これもいつもと変わらない。
ゆっくり活動を始めた内臓から、体全体に伝播する熱を感じて、スープがおいしい季節になったなと少し笑う。
たっぷり時間をかけて終わる朝の時間。
気持ち程度に開けた窓からこぼれる朝日に目を細める。
雲の低い空は、不思議と明るく見えた。
よし、行くか
今日もいつもと変わらない日々が始まる。
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