13日目 グラニースミス

彼曰く、雨の日はアップルパイ。


 ***


また雨が降り始めました。

せっかくこれからはいい天気が続くと思っていたのにこれ。

小学生の林間学校で、友達をからかうように言ってやったことがありました。


「自然はミクのいうことを聞いてくれません!」


ミクちゃんの顔も忘れてしまいましたが、彼女もいっしょになって笑いながら小雨降る森の中を走った思い出は残っています。

懐かしいね、あの頃と全く変わっていない。

この大自然は1人のちっぽけな存在のことなんて気にしていられないんですよ、結局。

からかっていた間は自分の方が強いと謎の優越感に浸っていましたが、今も昔も私の自然界における重要度なんてそんなものなんですよ。

学歴がよくても有能じゃないと意味をなさないこの社会でさえ、自然に対しての効力はないのですから。


おとなしく従うしかないね。

雨の日何ができるのか。

家でおとなしく、大人らしく過ごすのも一興。

でも何か食べたい、食べるならおいしいものがいいよね。


というわけでやってきたのはグラニースミス。

あのアップルパイのお店です。

ここのいいところは、雨の日には来店ポイントが2倍になること。

雨の日ポイント稼ぎに行くために向かいます。


ここのアップルパイはとっても好き。

ダッチスクランブル、フレンチダマンド、イングランドカスタード。

季節限定のマンゴーとラズベリーのアップルパイが目を引きます。

今回はいつものフレンチダマンド、気になるシーゾナルフレイバーのマンゴー&ラズベリーにしました。

お姉さんから受け取るときの喜びはいつも以上、雨だけどちょっと得をしたうれしさからくるのでしょうか。


持ち帰るとき、手提げをそのまま手に下げるとパイまで濡れてしまいそうで、わざわざ紙袋を胸まで抱えてゆっくり歩きます。

こうしていると、魔女の宅急便で大荷物を抱えたキキみたい。

新しい生活が待っているわけじゃないけど、雨の日の外出はやっぱりどこか特別な感じがする。

美味しいのはわかっているけど、それでも期待してしまうあの味を想像しながら帰るのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る