5日目 しとしと

彼曰く、今日もしとしと、天気変わらず。


 ***


振り続ける雨。

しとしとと、体にへばりつくような湿気。

雨なのか、それとも汗なのか、何となく触りたくない粘り気。

少しだけ寒気を感じて折りたたんだ腕と腕との間に生まれる摩擦とも違う気持ち悪さ。

しっとりと、じっとりと、梅雨の季節が続いている。


雨の日はやっぱりやる気が出ない。

最近こればっかじゃん?一緒じゃん?

そう思えてならないけど、雨の日に気分が下がるのは仕方ない。

ドラマで大体主人公が悲しい思いをするときには雨が降る。

土砂降りのこともあればしっとりと降り続けることもある。

どんな降り方でも雨は雨。

気温も気分も下がっていくのです。


嫌になるほどべたべたするのに、どこかちょっと肌寒い。

人肌恋しい季節なのに、人と触れ合うと気持ち悪くなるから触れたくない。

針のないハリネズミみたいな状態。

素肌で向き合うっていうのも難しいです。

すっぴんで人に会うのが嫌なのと一緒。

誰かに見られるなら、ちゃんと準備した状態で向き合いたい。


実は化粧品にはあまり凝っていない。

毎日使うわけではあるけど、別にモデルさんなわけじゃない。

でも人に会うにあたってそれなりの顔面は作っておかねば。

起きたままの顔で会社に向かうなんて無理。

裸で外に出ているようなもの、恥でしかない。

まあ、許されるなら何も着ないで外に出て、海行ってる気分だけでも感じたい。

そもそも暑い中を服着ないといけない自然の方がきつい。

汗でべたつく体が嫌なの。


人と会えば大体天気の話になるこの季節。

誰かと話すときに毎回話題作りに悩む私としては生きやすい季節だ。

「今日も暑いね」

「今日の雨ひどいな~」

「やばい、夕方にひと雨来るの?洗濯物干しちゃったよ~」

一人暮らしの阿鼻叫喚。

自然に見事にしてやられる人間たちのるつぼ。

道のど真ん中で少しずつ濁っていく水たまりみたい。

嫌なところ、嫌な時に、嫌なものはたまっていくんだなぁ。


水たまりのど真ん中。

ちょっと遊びで飛び越えようとして、思い切りズボンにはねてしまった水でひざから下が気持ち悪くなってしまったことを感じながら、空を仰いでしばらく立ち尽くしていた。

これが人生か、じめじめするな…。

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