誰かに向けてるひとりごと

21日目 喜びの秘め事

彼曰く、おめでとう、ただ純粋におめでとう。

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「内定おめでとう！やったね！」

「ありがとうございます、絶対入りたかったのですごいうれしいです！」

LINEの画面に新しいトークが連なっていく。

普段は開かないアプリを使っていると、なんだか少し気恥ずかしい。

別に恥ずかしいことをしているわけではないし、隠すようなことでもないけど、何となく誰にも見られたくないなって。

そういう秘め事が誰しもあると思う。

パンが好きすぎて「朝何も食べませんから」と言いながら出勤途中にコンビニで菓子パンを買って食べながら来る。

好きな人のことが気になって、用もないのにその人が見えるところまで行って、背中が見えただけで満足して席に戻る。

実は漫画を描いてるけど、会社の人に見せるのは恥ずかしいから内緒にしている。

最近彼氏ができたけど、「しばらくいなくていいから」って周りに公言していた手前公表するのが恥ずかしくて言えない。

たいていそういう悩みって自分が恥ずかしいって思っているだけで、何か大きな問題があったりするわけじゃない。

でもやっぱり秘密は秘密。

自分の本性とか癖とか、知られたくない事実とかは、あるから隠す意味がある。

自分だけ知っている未来とか、誰も知らないのに知っているとか、なんだか鼻が高くならない？

ときどきやり取りをする子。

実は最近まで一緒にいた子で、就活中だった。

大人しい子で、真面目な印象とは裏腹に、一人でヨーロッパに長期旅行したりとかなり行動的な一面も持っている。

ちょっといいなと思ったり、しなかったり。

ゲームをしながら電話したり、就活のことについてアドバイスしたりしていたのだけど、今週ついに内定をもらったらしい。

しかも私の会社だった。

就活の様子はときどき聞いていたし、たまたま会社の前で出くわした時もあったからまさかと思ったけど、本当に内定をもらうとは思っていなかった。

実情を聞いて「やっぱり別の業界に行こう」と思う可能性は十分にあったから。

でもきっとなにか引っかかるものがあったんだろう。

「いいのか？」と心配だったけど、ちょっと嬉しかった。

一緒に働けることも、この事実をおそらく今のところ自分しか知らないんじゃないかと思ったから。

他の人とも連絡先を交換していたらその限りではないだろうけど、それはまた別の秘め事だから。

「４月からよろしくお願いしますね！」

実際に会社に入るのは次の４月、それまでこの情報はおあずけ。

秘め事は秘めている間が楽しい。

しばらくこの楽しみを味わっていようと思った。