誰かに向けてるひとりごと

7日目 延長

彼曰く、何でもかんでも伸ばせばいいってもんじゃないよ。

　＊＊＊

勘違いしてほしくないのだが、

　多くの人が声高にしてそう叫ぶ。

僕らは好きで家に閉じこもっているわけじゃない。仕方ないんだ。

働きたくても手っ取り早く雇ってくれる会社なんて世の中には少ない。

何もできなきゃ使いつぶされるし、何かできないとすぐに見放される。

社会に属そうと必死なのに、会社がそれを許さない。

『社会人になったら会社に勤めなさい』って、中学校の先生が言ってたのに。

そもそもあんた、会社に勤めてないじゃないか。学校は会社じゃないだろ？

そんなふうに馬鹿にしていた人間と同じ大人になった今、僕と一緒にいてくれる人は誰もいない。

会社で働きもせず、友達も恋人もいない、家族と離れて暮らして、とりあえずある金だけで暮らしている。

そういう人間を、社会は”ニート”と差別する。

『生きている人間を差別するな』と言っていた高校の教師は、進路希望容姿を見たとたんに『ここは君には難しすぎるんじゃないか？ご家族のためにも家から近いとところにするとか、確実に行けるところにした方がいい』なんて言いやがる。

差別するなって言葉はどこいった、ふざけてんのか？

世の中の人間はみんな歪だ、決まったことをやるためにはそれ以外のことすべてなかったかのように見て見ぬふり。

困っている人間よりも全体の利益、人々の生活よりも自分の名声。

利他主義と思っていた人は、超自己中心的で利己的な人ばかり。

誰もかれも、他の人のためといって自分の財布が膨れることしか望んでいない。

全体が得するはずだと口先だけの提案をして、実のある話を何もしない。

『皆さんの健康を守るため、ご協力をお願いいたします』

そう言いながら祭りは強行する。

ちぐはぐだ、狂ってる。

人には協力を求めて、自分の利権の及ぶ範囲で好き放題。

そんなものに付き合っていられるか、そっちが好き放題するなら、こっちもこっちで好き放題やってやる。

酒も飲むし、タバコも吸う、セックスもする。

旅行だって行く、外食もする、買い物も、カラオケやゲーセンだって、遊べるところで遊びつくしてやる。

夜の外出制限？なんで昼は制限しないんだ、人が多いのは昼なのに。

勤務時間の削減？働く時間が短くなったら稼げる場所がなくなるだろ。

ソーシャルディスタンス？感染の可能性がそんなことで少なくなるのか？人の多さは変わらないのに。

　人の欲望は止まらない、生きている限り。

伸ばして楽になるのはあんたの気持ちだけ。

それも今だけ、だよ。

未来がどうなっているかなんて誰にも分からないんだから。