17日目 昼起き

彼曰く、目の疲れがどこかに飛んでいった、気がする。


 ***


久しぶりに昼に起きた。

一応起きてはいたのだけど、その時初めてベッドから出た。

軽く顔を洗って、トイレを済ませてまたベッドに入る。

今日の外出、これだけ。

外から雨音が聞こえてきたから出かける気にもなれなかったし、食べ物を買いに行く気分でもなかった。


昨日の内に買っておいた切り干し大根煮と牛肉コロッケをトイレから戻るついでに持ってきて、ベッド横に置いてあるワゴンから割り箸を取り出してのんびり休日モードのスイッチオン。

いつでも寝れるし、いつでも食べ物をつまめる。

これぞ至福の時間、ビバ雨の休日の昼起き。

特別なことをしなくても、特別な時間を作ることはできるのだ。

そう、iPhoneとiPadならね。


今日一日はずっとマンガを読んでいた。

好きな漫画を読み返したり、新しい作品に手を出したり、ゆっくりと過ぎていく時間を感じながらいろんな世界に浸っていると、いつの間にか真夜中になっていた。


ずっと真夜中でいいのに。

灰に潜り 秒針を噛み

白昼夢の中で ガンガン砕いた

でも壊れない 止まってくれない

「本当」を知らないまま 進むのさ

私にとっての自由な時間が、このまま続けばいいのに。


ずっと架空の世界に居ると、「本当」の自分と「架空」の自分が混在して、

ふと時間を意識した瞬間に「本当」の自分が戻ってくる。

その間は時間が進むのも忘れて「架空」の自分のまま進む。

生きている間、それは現実逃避と言われるだろうけど、私にとってはそれが心地いい。

だって現実を意識する必要がない、嫌なことすべてから逃げているのだから。

逃げても向き合っても進むなら、しばらく現実を忘れた世界に居てもいいじゃない。


きっと今日がその日だっただけ。

夜ふかしっていうのは、そんなに悪いことじゃない、楽しいことで溢れているんだ。


サンデーうぇぶりの『よふかしのうた』。

女子の告白を断ったことで他の女子に責められた夜守コウ。

それで全部が嫌になり、不登校になった彼は夜の街に出かける。

そこで出会った七草ナズナに”夜の遊び”の楽しさを教わる。

不思議な雰囲気の彼女と散歩をするうちに疲れた二人は流れで一緒に寝ることに。

慣れない空気に寝たふりでごまかしていたコウだったが、首筋の刺すような痛みに驚き振り向くと、ナズナの口には血がついていた。

ナズナは吸血鬼だったのだ。

いわく、「お前の血はめっちゃうまい」

あわや吸血鬼になるかと思いきや、そんなことはなく。

「食事のたびに家族が増えたら嫌だろ?」といって、いたずらに眷属を増やしたりしない主義のナズナに「今日に満足するまで夜遊びしたっていいじゃないか」と言われるコウ。

初めての夜遊び、解放的でわずらわしさもめんどうなことからも遠い場所。

知ってしまった新しい感情を無くしたくない気持ちから、コウはナズナに「吸血鬼にして欲しい」とお願いをする。

吸血鬼になるには吸血鬼に恋をする必要があることから、ナズナは食事をするため、コウはナズナに恋をするため。

今日も二人は夜遊びを続ける―――。


下ネタは言うけど恋愛ネタは恥ずかしがるナズナがかわいい。

私も夜遊びずっとしていたいなー、って思いながら読み続けているとすっかり4時。

こんなに目を酷使しているのに、なぜか重い気分がなくなっていた。

きっと今日に満足したからだろうな。

昼に起きても、夜更かししても、楽しければそれでいいじゃない。

だって休日は自由なんだもの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る