7日目 これまでのエヴァンゲリヲン新劇場版

彼曰く、希望は残っているよ、どんなときにもね。


 ***


人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリヲン。


運命によってこれに乗り、人類の敵である使徒と戦うことになった碇シンジ。


長く会っていなかった父親に呼ばれて突然死線に立たされる。


「こんなの、乗れるわけないよ!」


そう言いながらも学校にも家にも、他のどこにも自分の居場所がない彼は、

自分が生きていてもいいと言ってもらえるように戦いに身を投じる。


「ぼくはエヴァに乗るしかないんですよね。

そのためだけに父さんに呼ばれたんだから。

だから僕はエヴァに乗るしかないんです」


自暴自棄になってやる気もなし、生きる気力を感じさせない彼を、

上司であり保護者役としてサポートする葛城ミサトが叱咤する。


「エバーのパイロットを続けるかどうか、あなた自身が決めなさい」


「・・・もう一度乗ってみます」


反芻するようにゆっくりと口を開き、自分の意志でもう一度乗ることを決める。


綾波レイは言う。


「あなたは死なないわ、私が守るもの」


困難を極めた作戦を経て、シンジは精神的に成長する。


ともに乗り越えたレイとの間には絆のようなものが生まれ、

周囲との交友関係も以前よりも活気に満ちたものになった。

学校でも積極的に話をするようになる。


 +++


ユーロネルフからやってきた式波・アスカ・ラングレー。

彼女の登場で友人たちとの交流に花が添えられる。

激化する使徒との戦闘も協力することで達成できるようになる。


未知の敵、使徒との戦闘の勝利。

自分に自信を持ったシンジは初めての感情を知る。


「初めて褒めてくれたんだ。

初めて褒められるのが嬉しいと思った」


同様にレイも今まで抱いたことのない感情を抱く。


「碇君といると、ぽかぽかする」


それぞれが精神的にさらなる段階に進もうとする時、

アスカは実験中に暴走、使徒化してネルフ本部に向かう。


図らずも迎撃を余儀なくされたシンジは、ダミープラグとはいえ責任を感じ、

ネルフから離れる決意をする。


しかし最強の使徒によって再びネルフ本部が危機に瀕する。

真希波・マリ・イラストリアスが2号機に搭乗し、

裏コードを使って奮戦するも一歩及ばず。

続けてやってきた零号機により使徒は倒されたかに思われた。


シンジが避難していたシェルターが崩壊し、外の様子が見える。

そのとき、死力を尽くしたレイが倒される瞬間を目にし、

荒廃した地下シェルター内を急ぎ駆け、再度初号機に搭乗する決意をする。


強力すぎるA.T.フィールド、失った左腕、エネルギー切れによる活動限界。

ぼろぼろになった初号機だったが、シンジの強い意志によって再起動する。


「綾波を、返せ!」


世界を巻き込み、押しつぶし、ひっくり返すような力を得たシンジは、

人の域を超えて神の力にまで手をかけ、レイを助けようと奮闘する。

自分のために。自分自身の願いのために。


「行きなさい、シンジ君!」


疑似シン化第2形態。

それはシンジにとっての約束された勝利の力。

人類にとっての諸刃の剣であり、絶望の始まりだった。


 +++


目が覚めると見知らぬ場所だった。

知らない人の声と、知った人の声。

自分の姿は前と同じなのに、他の人たちの姿は変わっている。

姿だけじゃない、心まで変わってしまったようだ。

誰も自分の身に起こったことを教えてくれない。

でもシンジは確かなものが欲しかった。

ここが自分の居場所だという確信が。


「碇シンジ君。あなたはもう、何もしないで」


優しかったはずのミサトは突き放すように冷たい。

他の人たちの視線も冷めていて、まるで腫物を見ているよう。

そのくせ肝心なことは教えてくれない。


「急にこんなことになってて、わけわかんないですよ!」


愛想をつかしてレイの呼びかけに答えるようにネルフに向かうシンジ。

父ゲンドウと再会し、新たな少年渚カヲルと出会う。


ピアノの連弾、星見の夜、音楽プレイヤーの修理を通じて元気を取り戻すシンジ。


自分の居場所を見つけたと思った矢先、この世の真実を目にする。

眠っていた14年の歳月、その間の終焉の過程、絶望にまみれた地上の姿。

14歳のままの小さな体には重すぎる責任を感じて心を閉ざそうとするも、

カヲルのアドバイスもあり、世界を元に戻すための行動を起こそうとする。


カヲルはシンジにとって希望だった。


かつての絶望の始まり。

サードインパクトの爆心地。

ダブルエントリーシステムの第13号機にカヲルと2人で乗り込み、

セントラルドグマへの侵入後、追ってきたアスカとマリを退けると、

彼らの希望の槍を引き抜いた。


これでめちゃくちゃになった世界を元に戻すことができる。

そう思った。


忘れられた使徒が活動を再開し、

1番目の使徒であったカヲルは13番目の使徒に堕ちる。

13号機の操縦はきかなくなり、意味不明な事態が次々と起こる中、

シンジにはじわじわと実感に変わる予感があった。


「ぼくのせいなのか・・・。ぼくが槍を抜いたから・・・」


世界を救う、もとの世界を取り戻すための計画が、

さらに世界を壊してめちゃくちゃにしていく。


「シンジ君は安らぎと自分の場所を見つければいい。

縁が君を導くだろう」


何がどうなっているのか分からない状況で、

唯一の心の拠り所となっていたカヲルの死を目の当たりにする。


「そんな顔をしないで。また会えるよ」


「カヲルくん!!!」



マリの手によってフォースインパクトは抑えられるものの、

変わり果てた世界をさらにかき回した現実に堪え切れないシンジ。

閉じこもったまま動こうとしないシンジを、

ヴンダーを救ったアスカが引きずり出す。

アダムスの器から逃げ出したアヤナミレイ(仮称)がそこに合流し、

L結界密度の薄い場所を目指して歩き出す。

当てもなく歩いていく3人はいったいどんな運命をたどるのか。


その運命も、明日ようやく終わる。

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