22日目 外套

彼曰く、昔の人の体温調節は大変そうだなぁ。


 ***


コートが好きだ。

冬と言えばコート。


コートにも種類が色々ある。

ステンカラー、チェスター、トレンチ、ダウン、モッズなど。

ロングとハーフの違いを考えなければ、

ボアジャケットやピーコートも該当する。

生地の厚いもの、薄いもの。

発色のいい派手めなもの、抑えて落ち着きのあるもの。

固めで頑丈な衝撃にも強いもの、柔らかくそのまま洗濯までできるもの。

技術の進歩は私たち消費者に色んな選択肢を用意してくれる。

社会人として着るべきコート、という定型句が昔はあったかもしれない。

最近は縛りも減り、自分の好きなコートを着やすくなったおかげで、

余計にアイテム数が増えた、そんな気がする。


冬の駅前、ロータリーのバス停、改札口。

街頭を見ると、それぞれが思い思いのコートに身を包み、

冬の寒さから逃げるように首を引っ込めている。

今年の冬も相変わらず寒かった。

毎年のことながらそのたびに新鮮な反応をしてしまうのは、

人間の性なのか、私だけなのか、分からないけれど。

冬の極寒も懐かしくなるくらいに、最近の昼は暖かい。

日によっては朝から気温が高く、コートを着ると汗ばむときもあるくらい。

服での体温調整が大事になってくる頃がやってきた。


この前散歩をしていたときのこと。

たまたま朝早くに起きることができたので、着替えて出かけることにした。

昼前でまだ少し肌寒く、パーカーにデニムパンツだとまだ冷える。

仕方なくいつものチェスターコートを着て、

買い物ついでに散歩を楽しんでいた。

日中、外食をして日用品を買いに他のお店に向かっているとき、

だんだんと背中に汗が浮き上がるのを感じていた。


私は代謝がいい。

30分ほど軽く歩くだけで汗をかくし、

ただご飯を食べるだけで汗がにじむこともある。

当然、温かいものを食べればそうなるけれど、

そうじゃないものを食べても汗ばむから困りもの。

個人的には代謝がいいことにしているけれど、

裏を返せばすぐに汗が出てくるということ。

せっかく寒さから逃れようとして着ているコートが、

昼間の温かい時間にはただの荷物になってしまうのだ。

自分の体のことなのだから把握しておきたいのだけど、

目の前のことにしか基本的に興味がない私。

上手く生きるのがへたくそなのはこういうところなんじゃないかなって、

最近は思うようになった。

その考えが報われた覚えは、いまのところない。

だから毎度毎度、晴れの日にコートを着ていくと後悔するんだ。


どんなこだわりがあるのか、私はチェスターコートとデニムジャケットしかない。

ちょっと前に色々と断捨離してしまったので。

冬とも春ともいえないこの時期。

朝は寒く、昼ごろからは暖かく、夜になるとまた冷え込む。

自転車に乗る私にとっては出社帰宅の時間帯の体感気温は他より低い。

仕方なくチェスターコートを着るけれど、

ハンガーにかけるたびに「なんでこんな厚着してるんだ」と思ってしまう。

汗をかけばさらに下がるんだもの。


そろそろ春夏物が出てくる時季。

次の休日は新作を物色しようかしらね。

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