12日目 積本
彼曰く、なかなか減らない贅沢品。
***
私にとって小説は夢の世界。
日常では感じられない冒険感。
自分にも不思議なパワーが秘められているんじゃないかという中二病感。
現実で聞いたこともないような恋愛模様に、
逆に現実でよく見る展開のギャグやコメディー。
自分とは違う生活をしてきた主人公と、
自分との境目が曖昧になって本来の私の姿を忘れてしまうような世界。
楽しくて、面白くて、辛くてもそこにいるのがやめられないような、
いつまでも続いていればいいのにと思ってしまう場所。
それが私にとっての小説。
つまり、人生の贅沢品。
日常的に使うものが日用品で使い捨てなのであれば、
日常ではなかなか使うことがない貴重なものは残されていく。
宝の持ち腐れとある人は言ったそうだけど、
そこにあるだけで夢を見させてくれるものが腐るはずがない。
そも小説は紙だし、今や電子書籍だってある。
紙は時間が経てば腐ることは歩けれど、
私が生きている間は腐らないし、電子なら死んだ後も残り続ける。
誰かの生きた世界が死後も残り続けるなんて、なんて贅沢なことなんだろう。
普通なら死とともに自分の物は処分されるか消えていくか、
忘れられて過去のものとされてしまうけれど、
贅沢品はずっと丁重に扱われる。
私ももちろんそのつもりだけど。
そのつもりというのは、小説を丁寧に扱っているつもり、ということだけど。
気づいたら本棚にある小説の中に、読んでいないものが大分増えた。
多分15冊くらい、ためすぎたね。
本を早く読むには要点を簡潔におさえられるように、
自分にとって必要と感じるスポットを見極める。
予測と結論、仮説と結果をちゃんと捉えられればOK。
速読のコツは「読まない」こと、と速読の達人は言っている。
でも私の目の前にある本たちはそんなことでは楽しめない。
あくまで速読の達人の言う「読まない」が通じるのは実用書や勉強本。
小説では速読で飛ばされる「行間を読む」ことにこそ楽しみがある。
私はそう思っている。
実用書だったら2冊を並行で読み進めることはできるけれど、
小説だったら一気に読み進めた方がいい。
その世界にどっぷりつかることができるから。
就寝時には寝ることしか出来ないのと同じ。
小説の世界は夢の世界。
眠るように読み込んで、読み終わるまでは見続けていたい。
途中でつまらなくなったら終わってもいい。
退屈な夢を見ていても面白くないのだから。
だけど楽しい時間ならそのままずっと続いてほしい。
楽しい夢はいつまでも見ていたいものだから。
大変な日常から逃げる場所、と考えてみても、
やっぱり小説は贅沢品だ。
貴重なものは大切に残しておくべきだけど、
このまま新しい夢を見ることができないのはもったいない。
そろそろ次の夢を見たいかな。
次の積本が増える前に、今ある見たい夢に漬かりたい。
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