26日目 運

彼曰く、きっと巡り巡って私のためになることが起きるはずだから。


 ***


運というのは残酷なものだ。

だれにでも平等に訪れる癖に、その恩恵は自分で気づけないことの方が多い。

気づいたとしても運を味方に付けるのはとても難しいことだ。

新しい仕事を任されたとき、自分が期待されて任されていると思えるか。

新しい出会いを見つけたとき、自分から積極的になれるか。

偶然の発見をその先に結びつけて考えることができるか。

すべて自分が積極的になることでしか、運を活用することはできない。

待っていても何も起こらない。

行動は人が起こすものだけど、人を起こすものもまた人であり、

その人の行動こそが原点なのだ。


自分で運をつかみ取るには早いうちに行動する積極性と、

良い選択肢を選ぶことができる判断力が必要だ。

何をするにしても挑戦を選び、その中でも自分に合ったやり方を見つける。

自分なりの武器を研いで、新しい地平に飛び出そうとする胆力がないと、

運をその手に掴むことはできない。

アニメや漫画の主人公が成功するように見える時期が私にもあったけれど、

それは全部、彼ら彼女らが前に進む選択をしているからだ。

フィクションの中だからすべてが成功してきているように見えるけれど、

実は過去に色々な失敗をしている主人公たちもいる。

過去の選択を間違えたことで思い通りの人生を歩めなかった者。

過去に選択肢を手放したことで運に見放された者。

そうした者たちの成れの果て、将来ありうる形としてあらわれるのが悪役、敵だ。

どちらが善でどちらが悪かなんて価値観次第だけど、

どちらになりたいかはそれこそ個人の選択に委ねられる。

そして自分の運をどう味方につけるかも自分次第なんだ。


嬉しいことであれば周りにも広めたい。

悔しいことであれば周りが同じ失敗をしないように警告したい。

楽しいことであれば周りと一緒になって楽しみたい。

哀しいことであれば自分がこれ以上苦しまないように気を付けたい。

運にはいろいろな性格がある。

時々助けてくれるもの、さらに幸福な時間をくれるもの。

突然隕石のように降ってくるもの、いつまでも憑いて回るもの。

生かすも殺すも自分次第。

運に自分の生死を委ねるのはとても勇気のいることだと思う。

その道が安全だとは限らないのだから。

だからこそその場での積極性、判断力、胆力が問われるのだと思う。


昨日のクーポン、私は結局受け取らなかった。

それは1つの運を見放したことになる。

店員は運を授けなかった、私は運をつかもうとしなかった。

・・・どちらが悪いかは分からない。

でも日記で考えるきっかけになったイベントだった。

クーポン1つに縋りつくのは器が小さいのかとか、

コロナ禍で店側のサービスの質が落ちているだとか、

悪い方向に考えようと思えばいくらでも考えられるし、

たぶん悪い方向に考えがちな出来事だったと思う。

でもこういうときにいい方向に考えられる人こそ、

かっこいい大人になれるんじゃないか。

1つの運命に踊らされることなく、優美に人生を楽しんでいる。

余裕のある人生、とまではいかなくても、1つ1つの運を大事にする生き方。

どう転んでも”自分”を曲げない生き方が、きっと一番かっこいい。

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