19日目 勝ち確
彼曰く、今日が地獄の大砦!
***
確実に迫る納期。
一度決断したからには背水の陣で挑む。
どちらに転んでも失敗はないけれど、この戦いには勝ち負けがある。
勝てば官軍、負ければ賊軍。
まあこちらが完全に敵方になるというわけではないのだけど。
これは仕事のプライドをかけた戦いだと思う。
「私やってやりますよ、どこまでも追いかけます」
まるで犯人を追いかける新人刑事のように息を撒いて、
ハンドルを握る手に力がこもって前のめりになっている。
まだまだ危なっかしい所はあるけれど、これは将来が楽しみだ。
ゆくゆくは大犯罪者を捕まえて大出世してくれるかもしれない。
期待の星はこんなところにいたんだなー。
雑な想像をしながら後輩の運転する車に同乗している。
昨日から交渉している取引先に今日はついて行くことにした。
時間も遅い、おそらく今日も粘られるだろう。
2日連続で新人を夜遅くに何度も運転させるのはよくない。
行きは運転してもらうにしても帰りは私が運転していくことにする。
夜の運転は先週から引き続き3回目。
私も運転が苦手というわけではないけれど、
眠気が襲いかける時間帯だから少し怖い。
気分転換という意味でも後輩と雑談をしながら行くのはいい。
ストレス発散にもなるだろう。
「いや、ついてきてくれて助かります」
後輩の支えにもなれているみたいだし。
「ただ運転するだけでいいなら朝飯前よ」
「そんなことないですよ、昨日みたいに取り乱しそうになったら困りますから」
「たしかに、それで事故られでもしたらたまったもんじゃないね。責任が重すぎる」
「でしょう?だからいるだけでありがたいんですよ、ほんとに」
ほんとに、今日はついてきてよかった。
長い夜の予感が肌に吸い付く車内で、コンビニのパスタを出す。
もう少しで目的地。そこまで我慢できるかどうか。
後輩のドライビングテクニックに期待して、雑談に華を咲かせようかしらね。
頭文字Dばりの走りで夜を進んでいく。
外の灯りが少ないのはちょっとばかり寂しいけど。
話には光が見え始めてるから、今夜は長くても短い夜になりそう。
数時間後。
目的のものを回収できた。
後輩お疲れ様!頑張ったよ君は。
欲しいものを獲得する権利が君にはある。
努力を重ねた結果を得た君には、また新たな壁がやってくる。
次の壁はすぐそこ、でもここまでくれば勝ちの目は大きい。
打ち破れるだけの準備はもう整えてある。
あとは君が壊して、乗り越えて、先に進むだけだ。
私は後ろ、いや横で支えているぞ。
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