7日目 かぼちゃのスープ

彼曰く、あったかとろとろ、じっくりことこと。


 ***


早起き。

珍しく8時ごろに目が覚ます。

なんで今日は早く起きれたのかな。

目覚ましのおかげ?それとも何か気分が変わったのかな。

どっちもそうかもしれないけど、

起きようと考えていた心構えのおかげだと思う。

今までと違うことが起きるときは、たいてい心の道筋が変わったとき、

方針が変われば考え方も変わるし、生き方も変わる。

生き方なんて、朝からたいそうなことを考えてるじゃない私。

まだ人生を語るほど生きていないでしょうに。

そう、あと3倍は生きなきゃ。


少しの間布団の上でだらりとしていたけれど、

前よりもすっきり目覚めた気がする。

気分の問題かもしれないけど、実感として頭がクリアに感じる。

北海道に旅行した時に見た、神の子池のような透明度。

湖底にすぐ手が届くんじゃないかと感じるほど浅く思えるくらい。

透明度が高すぎて水面からの湖底の距離を測り間違える。

私がこの感覚に陥るのは、きっととても久しぶりの事。

だからクリアなことは実感しているけれど、

その実感さえ測り間違えたものなんじゃないかと疑ってしまった。

不思議で、きっと懐かしい感覚で、でもやっぱり実感のない、

凪いだ水面にぽこんと現れた泡のような目覚めだった。


さてそんな虚実混ざった覚醒体験をしてどれくらいたっただろうか。

今日から日記を朝に書こうと思ってるんだったと、

寝起きの頭で思い起こしたところで時計を見る。


スマホ画面に燦然と輝く9:30。


うん、二度寝したな。


さっきまでの懐かしい感覚はなんだったのか。

結局は惰眠を少し追加していただけだったのかもしれない。

もうちょっと気合の入った起き方をしたかったなぁ。

ぼやぼやと考えながら、身支度をする。

それでもこんなに早く出るのは久しぶり。

靴を履いて携帯を取ったときに見た時間は9:50。

10:00前に家を出ること自体最近はなかった。

ちょっとした高揚感とともに家を出る。

何も食べずに出てきたからか、少しお腹が空いている。

朝何も食べないのはここ6年くらいのルーティンだったから当然なのだけど、

気分的に何か胃に詰めておきたい。

食欲がわいている朝は久しぶりだ。

高校時代、朝部活で早起きしていたころを思い出す。

寒風に前髪を煽られながら進んでいると、ふとスープを食べたくなった。

じっくりことこと、とろ~りカップスープ。

日清だったか、クノールだったか、製造会社はたしかそのあたり。

字面も好きだし、味もなかなか美味しいのです。

食べてもいないのに口の中に味が広がっていく。

考えるとまた一層お腹の虫がなりそうになる。

近くのコンビニにあるかな、一緒に何かパンも買おう。

会社についたら温かいものが食べられると思うと、

寒い中を歩くのも苦じゃなかった。

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