誰かに向けてるひとりごと

11日目 煩悶

彼曰く、なんだか最近、ヤキモキする！

「いやー、どうしよっかなー」

昼下がりの部署部屋の一角。

先輩がなんだか呟いている。

パソコンのモニタにはカラフルなグラフや表。

人の名前や説明文らしき文章。

0が並ぶ数字の羅列が表を埋めている。

お気に入りのカップを軽く揺すりながら、

一点を見つめて唸っている。

さっきからずっとこの調子。

話しかけても「うーん」しか返ってこない。

考え事をしているときの先輩だ。

分からないこと、聞きたいんだけどな。

なんだか話しかけづらい。

優しい先輩は何でも答えてくれる。

紙の補充方法、資料の場所、

契約のコツ、おすすめの息抜き。

そんなことわかって当然と言わんばかりに、

質問はすぐ答えを知る。

IN、OUTのタイムラグが少ないのです。

頭の回転が速い人だと思ったのです。

友達と喧嘩したことをつい話したときも、

文句も言わず聞いてくれた。

優しい言葉もかけてくれた。

見習うところの多い先輩だ。

「分からないことだらけです」と、

連続の打ち合わせの感想を聞かれて答えたときも、

「大丈夫、みんなそんなもんだから」

と言ってくれた。

「結局やってみないとわかんないよ、全部そう」とも。

初対面ではあたりのキツそうな人だったけど、

しばらく一緒にいる内に、見えない部分が見えてきた。

そんな人でも悩むことはある。

私みたいな新人には、まだまだ想像もし得ないこと。

先々のことも想像しながら、いつも何かで悩んでる。

取引先と打ち合わせの都合がつかない。

想定より少ない契約しかとれなかった。

依頼していた先方が不慮の事故にあった。

打ち合わせで相談したスケジュールから大分外れてる。

新人にお願いする仕事をどうしようか。

今日の打ち合わせの準備って大丈夫だっけ。

知らない条件が加えられてる・・・。

先輩に聞きたいのに飯行ってる・・・。

ままならないことばっかりだ！

もう少しうまくハマるはずだったのにな～。

屋上でコーヒーブレイクをしながら、

靄をバッと散らすように両手を掲げる。

休憩時間くらいゆっくりすればいいのに。

「うわー、これどうしよう。困るな～」

休憩明け。

今度は紙の資料を見ながら悶えてる。

またうまくいかないことがあるらしい。

・・・質問してもいいかしら。

怒られたりしないかな。

たぶん大丈夫だと思うけど、

また明日にしようかな。

でもこれ聞かないと仕事できないし、

できる限り今日のタスクはやりきりたい。

でもなあー、邪魔するのも悪いしなあー。

うーん、うーん。

あー、ヤキモキする！