2日目 願い
彼曰く、心から強く願えばその願いはきっと叶う。
上に登っていくことが好き。
どんどん誰もいないところへ駆けあがっていきたい。
同じ飛ぶなら飛び上がりたい。
背中に強い風を受けて、吸い込まれるように。
知らない空を知るために。
生きられるのかを知るために。
ときどき飛び降りてしまいたいと思うこともある。
やっぱり自分の場所はここじゃない。
地面を踏みしめて。ここが自分の場所だと確かめて。
星の力を小さな足の裏に受け止めて。
伝わる痛みを生の証と思い込んで。
そこから動けないでいる自分がいる。
足が地面にあることに満足して、このまま浸っていてもいいと思ってしまう。
まわりはみんな飛び上がっていく。
見えない翼をつけだして。
腕に、肩に、腰に、背中に。
ゆっくり飛んでいくあの人も、急速に飛び上がるあの人も。
みんながどこかへ行ってしまう。
私だけが土を手放せない。
この暖かさを忘れられない。
友達が1人飛んでいくたびに、足元の温度が上がる。
100人を超えたころ、足と地面の境目が見えなくなった。
体が溶け、力が抜けて、まるでお母さんの
そこから抜け出せない自分がいる。
誰かが一緒に飛び上がろうと言ってくれた。
温かいだけじゃない温度がどこかにある。
2人で探しに行かないか。
それは冷たいだと誰かが言った。
どんな感覚なんだろう。
よくわからないものは怖い。不安。
でも知ってみたいと思う。興味。
心が少し波打つように動く。
温かい地面の上で感じるはずがない感触。
この気持ちは何だろう。
知りたい。理解したい。浸ってみたい。
ここじゃないところでしか味わえないなら、
足が離れたってかまわない。
土以外の何かを、自分の足でつかんでみたい。
一緒に飛んでいきたい。
いつか忘れたこの想い。
いつも浮かぶこの願い。
心は溶けていないから。
この気持ちだけはずっと残る。
知らない空に目を向けて。
見えない場所に足をつけ。
ともに行く友と翼を並べて。
どこまでだって飛んでいく。
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