また進化した件
~サイド 弘樹~
いやー。あっけなかったな。
「終わりましたね」
「ああ」
「あっさりでしたね」
「ああ」
「もっと強いかと思っていましたね。接近もされなかったので鑑定できませんでした」
「ああ」
「また更地ができましたね」
「ああ,そうだね」
正直俺はあっけに取られていた。こんなにもあっさり終わるのか。相手は腐ってもこの階層のボスだぞ。あのビーたちと同じくらいの強さのボスだぞ。
「おそらく,マスターの取った作戦が良かったということと,マスターのレベルが上がっていたんでしょうね」
そうか。俺のレベルが上がっていたのか。
「でも今まで戦った魔物の方がレベル,圧倒的に高かったよね。でも俺の方が強かった。なんでだ」
「それは進化をしたからです。進化をすると色々圧倒的に強くなります」
そうか。もしこれから進化した魔物に出会ったら注意が必要だな。あれでも今まで進化中の魔物に出会ったことないぞ。
「もしかして天然の魔物って進化しないのか」
「基本しませんね。進化するという知恵がないからです」
じゃあ進化できるのってこの世で俺だけなのか。あれでもあのウルフのボスって他の個体と色が違ったよな。
「でもさっきのウルフ,ボスだけ違う種類だったよね」
「それは必ず起こることだからです。あの群れのボスになったウルフはおそらく自動的に進化すると思われます」
へー。そういうこともあるんだ。それに,あのボスあたまよかったよな。途中で部隊を二つに分けたり。あれ,でも魔物は知恵を持たないんじゃなかったっけ。
「一つ聞いていい?」
「かまいませんが」
「あのボスさ,頭良さそうだったよね。でも魔物って知恵を持たないんだよね」
「それは,あのボスが魔獣としての一面があったからだと思われます。魔物には生粋の魔物と獣よりの魔獣がいますから」
「ほー。なるほど。勉強になったな。魔獣っぽい魔物は知恵を持つことがあるということか」
「ですがこの分野はあまり解明されていない分野なんです。誰にも本当のことは分かりません」
「未知の問題なんだな」
「マスターなら解明できるのではないですか」
「分からない。だけど善処はしてみるよ」
「流石です」
◇
「そうだ,ステータスどうなっているかな」
「そうでした。一番大事なところを忘れるところでした」
「よし,ステータスオープン」
ファイアリザード
Lv40
HP100000
MP40000
攻撃力27000
物理防御力9800
魔法防御力9800
素早さ6900
進化可能経験値(40/40)進化可能
進化先 ファイアドラゴン
クオーターファイアリザード
レジェンドリザード
スキル 炎魔法上級Lv10進化可能
炎魔法中級Lv10進化可能
炎魔法下級Lv10進化可能
解析鑑定
スキル管理
炎系竜流体術Lv10進化可能
炎耐性Lv10進化可能
炎魔力操作Lv10進化可能
おうおう。すごいことになってるじゃいか。まず,種族として進化可能なのはいい。予想どうりだ。百歩譲って選択肢が三つあってなぜかどれもすごく強そうなのもいい。だが問題はステータスとスキルの進化可能の文字だよ。どういうことだ。
「マスター,スキルの進化ですが,正直に言うと私も何が起こるかわかりかねます。今までこのような事象は非常に珍しいことなので」
「さいでっか。つまり誰にもよくわからないということだな。じゃあ,スキルの進化はどうすればできるんろう」
「おそらくですが,スキルの進化は種族の進化の際,自動で行われるかと思います」
「便利だな。つまりあれこれ考える必要はないってことか」
「そうですね。ただスキルが進化した結果どのようになるかはわかりません。元のスキルがなくなるのか,新しいスキルが手に入るのか。それは未定です」
「分かった。まあ,あれこれ考えていても何も始まらない。今は種族の進化のことについて考えよう」
「ですね」
「まず,ファイアドラゴンだが,これはおそらくトカゲからドラゴンになれるということか」
「そうだと思います」
「普通にありだな」
「はい。ドラゴンは別名空の覇者。その強さは生物界最強ともいわれています。圧倒的上位種族です。そのランクは最弱のワイバーンでもB+。最上種どれほどの強さを誇っているのか図り知れません」
「それに何と言ってもカッコイイしな。男の憧れだよな」
「そこは分かりかねますが」
「手厳しいな。次のクオーターファイア―リザードだが,これは今の俺の能力を全体的に強化するかんじかな」
「はい。同意見です。クオーターと付くので今のファイアリザードの上位個体かと」
「なるほどなるほど」
「こちらはもしダンジョン暮らしをするのであればありかと思います」
「そっか。いつかここから出るのであれば飛べた方がいいもんな」
「そうですね」
「最後のレジェンドリザードだが,これは何だ」
「これはリザード,トカゲの英雄王です」
「そんなものがあるのか」
「はい。リザードであれば無条件で全ての個体を従えられる可能性もあります」
「ほうほう。それはすごいな」
「どれも長所があり迷いますね」
「ああ。もし進化の系統樹みたいのが分かれば幾分か楽なんだがな」
「そうですね。スキルみたいに説明が出てくればいいのにですね」
「それだ。スキルに説明が出てくるのは鑑定しているからだろ」
俺は名案を思い付いた。
「そうですが,それがどうかし⋯⋯。あ,なるほどです」
「そう,進化先のところを鑑定すればいいのだよ。今までは鑑定さんがやってたけど妖精がやったら何かもっとわかるかも知れない」
「それは思いつきませんでした。早速やってみましょう」
「よし,鑑定,進化先」
レッサーリザード
┃
ミドルリザード
┃
ファイア―リザード
│
ファイアドラゴン
|
グランドファイアードラゴン
│
ハイリザード
|
クオーターファイア―リザード
レジェンドリザード
|
ゴットリザード
ほうほうなるほど。なかなか素晴らしいな。これが分かっていればもう選択で迷うことはない。あれ,グランドファイアードラゴンのあと,矢印があるけど何も書いていない。
「このグランドファイアードラゴンの後さ,何も書いていないよね」
「はい。そこに関しては私も分かりません」
「そっか」
「最近お役に立てずにすいません」
「大丈夫。十分役に立ってるよ。迷宮の時とかすごく役に立っていたじゃないか」
「それは⋯⋯。ありがとうございます」
「それはそうとどうしようか。できるだけ強くなれる方がいいから,進化先は多いほうがいいんだけど,どうしよう」
「今,思いついたのですが,このファイアードラゴンなどの項目を鑑定できないでしょうか」
「そっか。二重に鑑定することのできるかもしれないしね」
「はい試してみます」
それにしてもどうすればいいんだろう。おそらく今が超大事なときだ。ここで選択を間違えればこの後ずっと後悔することになるだろう。真剣に考えなくちゃ。
「鑑定,できました」
「おお,よくやった」
「鑑定結果,出します」
ファイアドラゴン
炎をすべるドラゴン。硬い鱗と強靭な肉体を持ち炎を自在に扱うさまはまさに神話のドラゴンそのもの。見るものに圧倒的な存在感と感動を与える。ギルドランクA+。
レジェンドリザード
リザード界のお大英雄。その姿は見るすべてのリザードに衝撃を与え無条件で屈服させる。ギルドランクA。
だいたい分かったぞ。
「こう見るとやっぱりこれがいいかな」
「そうですね。マスターのこれからの行動にもよりますがこれが一番効果的かと」
「よし,進化しよう。久しぶりだけどできるかな」
「そんなに難しくはありませんよ。ただ,進化したい種族を思い浮かべて進化と祈ればいいだけです」
「そうだね。それに進化には時間がかかるんだっけ」
「おそらく前よりも上位種に進化するためかなりの時間がかかると思います。ですがその点ここはかなり居場所でしょう。この階層にいた二大トップが亡き今,新たな最強の座を巡って様々な種族が力を蓄えます。その点,そのどちらもをやっつけたマスターに挑む者はいないでしょう」
「だな。じゃあ,さっそく進化するとしましょうか」
(進化)
その瞬間,あたりが青い幻想的な光に包まれ,弘樹は意識を失った。その気を失った姿は寝ている赤ん坊のようであどけなく,これからに弘樹の身に迫る脅威など全く知らない,そんな様子だった。そして,目覚めたとき,世界は大きく動き出すこととなる。今まで人類と魔族の争いに傍観を決めていた龍族が。勇者を迎え圧倒的な戦力を誇っていると思っている人族が。この世界を面白おかしく生きようとする悪魔族が。他にも数々の種族が動き出し,世界は革新の時を迎えることとなる。
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