短編のページ

ぷよ夫

猫が飼われるわけ

「爺さんや」

「なんじゃい、婆さんや」

「テレビじゃ」

「テレビじゃな」

 ピコ。

 家の長男がテレビをつけた。

 何の変哲もないニュースだ。

 画面の中で、ネクタイを締めた男が、何やらにこやかに話している。

『最近の研究で、飼い猫は自分の名前を理解しており……』

「なんや」

「どうした婆さん」

「ネコと人間、一緒に暮らしてれば、みんな知っとることやないけ」

「せやな」

 テレビの話はまだ続く。

『またその昔、海を旅する船や、穀物を蓄えた倉庫のネズミを退治するために、世界中に……』

「そうなのか、爺さん」

「知らんわ」

「その昔、ていつかいな」

「それこそ、知らんがな。ネコはネコやがな」

「近頃はヌコともいうらしいがの」

 だからどうだ、と顔を合わせ、どうでもいいとテレビに向き直る。

『その中で、小型でヒトになつきやすい個体が増えて、今の家ネコに……』

「こら、間違っとるな、爺さん」

「間違っとるわ」

「こんなん、ヒトがアホやからに決まっとるわ」

「せやな」

「ガキんちょのふりしとれば、ヒトちゅうのは自分の子ぉと勘違いしよる」

「しよるな」

「ほんで、メシも寝どこもこしらえるで、ネコも上手い事やっとるんだわ」

「そや」

「わしらも、腹ぁ減ったな」

「腹ペコや」


『にゃー』

『ごろにゃ』

「おやタマ、ミケ。どうした?」

 長生きネコが二匹、長男の後ろで寝ころんでいたのが起きだして、体を擦り付けてきた。

『なーぉ』

「よしよし」

 なでなで。

『ごろごろ……』

「おまえもか、よしよし」

 なでなで、すりすり。

 

「なー、坊っちゃん、ご飯おくれや」

「なでなでやない、ご飯や」


『みー』

『ごなー』

「うひゃひゃ、おいおい、今日はずいぶんくっついてくるな」

『ぐぅうう、んにゃっ!!』

「お、おい。どうした、いきなりネコパンチかよ」

『シャーーっ!』

 べしッ!

 

「はよ、メシよこさんか!(がぅー)」

「腹ペコなんや!(べしべし)」

「なんでヒトちゅうのは、こうもアホなんや!」

 かじかじ……。


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