2話.入学式

入学式の準備が完全に終わったのは入学式の始まる20分前だった。私は担任を


もつ立場だから、講堂の前側に席が用意されている。峰万理ヶ丘学園の入学式は


他の学校と違い、各自入場して着席した状態から始まる。つまり担任が新1年生


をまとめて入場させる必要は無いってこと。各自入場だから、入学式の開始する


5分前には既に皆着席している状態になっている。時計が9時になった時入学式


が始まる。長い祝辞を聴くのは嫌で仕方ないけれど、児童の手前仕方がない。私


が真面目に聞いていなければ児童に悪影響だろうと他の教師にお灸を据えられる


と思うからね。早く9時になって早く終わらないかな。あと2分ちょいで始まり


そうだけど。私はじっと待つのが苦手だから、式が終わった後とかはつい身体が


勝手に怠けようとする。気を付けないとね。9時になって入学式が始まると校長


先生が長々ち祝辞を述べ始めて気持ちが沈む。祝辞3人分と400人の名前を読


み上げるのって何分掛かるのかな。それだけで1時間は使いそう。校長先生の祝


辞は病むほど長いし、教育委員会教育長とPTA会長の祝辞も相当なんだろうね。


私が耐えれるだけの長さにしてほしいけど流石に無理でしょう。今やっと校長先


生の話が終わった。今は9時10分。校長先生は10分も話してたんだ。てこと


は単純計算であと20分は祝辞を聴くのね。終わる頃には力尽きてるかも。必死


に聞き流していよう。私は悶々と聞き流す、1人終わったからあと10分だ。私


は教育委員会教育長の話をこれでもかというほど必死に聞き流すとあっさり終わ


る。教育委員会教育長の祝辞は5分、良い人だ。上司に欲しいぐらいの良い人。


私は今一度気を引き締めた。能力科の児童の名前を読み上げる仕事があるんだか


ら。380人分名前が読み上げられた後だから時間があるし、もうちょい内心は


怠けてても問題ないはず。でも読み上げるだけだから380人なんてあっという


間に終わるかな。もう今既に特進科の読み上げ終わって、一般科も3クラスほど


終わった。もうすぐだね。しっかり読み上げないと。


「能力科担任、白山 花奈晃。」


名前を呼ばれて私は児童の見本なれるようしっかりとした返事をする。


「はい!」


つかつかとマイクのある卓まで歩いていく。片手には児童の名前が記された冊子


を持っている。


「能力科、1番風見 儚人君。2番五ノ井 亜良さん。3番枝川 木葉さん

 

 4番朧 雲良さん。5番嘉良 恋夏さん。6番桐野 安嶌君。

 

 7番毛馬 魁斗君。8番志 碧翠さん。9番仕舞乃 狛亥君

 

 10番不知火 藍月さん。11番瀬谷 令君。12番手貝 和尊君。


 13番二枚橋 充琉耶君。14番縫島 叶さん。15番舞海 言葉さん。


 16番味蕾 蓮花さん。17番妻良 永輝君。18番森飼 国馬君。


 19番弓良 歌君。20番綿貫 楓さん。以上です。」


20人分の名前を読み終えると私は一礼して席に戻る。名前の読み上げが終わっ


た。あと少しで入学式が終わる。お祝いのメッセージを保健医の先生が1つずつ


読み上げて、退場すれば終わり。私が入学した時より大分簡略化されてる。


「お祝いのメッセージを読み上げます。」


お祝いのメッセージに掛かる時間は10分も無い。辛抱強く待てば直ぐに終わる


はず。私は読み上げるメッセージに耳を傾けていた。気付いたことは、大学の卒


業式と書いてる人が変わらないってこと。確かに初等部から大学まである学園だ


から中等部や高等部の校長がお祝いメッセージを送るのは普通だ。


「以上でお祝いのメッセージの紹介を終わります。」


あとは退場だけ。能力科は1番最後だから、退場まで時間が掛かる。


「新入生が退場します。」


特進科の1組から退場していく。整列させるのに時間が掛かって、退場は手際良


く進まない。結局特進科の退場だけで10分近くかかった。単純計算で一般科は


40分かかる事になる。能力科の児童たちは待てるのかな。一般科は次々と退場


していく。一般科クラスの先生はベテランが多かったため、退場にはさほど時間


は掛からなかった。


「能力科クラスの人は出席番号順に並んでください。」


私が声を掛けるとすぐさま行動に移してくれる。なんと立派な6歳児なのだろう


か。言われてすぐに行動できる6歳児って相当レアだと思う。私のいう事を聞い


てくれ、能力科クラスの退場は2分ほどで完了する。こんな立派な偉い子たちを


受け持てるなら良かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る