第1章 美少女ギャルの罰ゲーム告白見抜いて許したら絡まれるようになった件
第1話
罰ゲームの告白をされてから週が明けて月曜日。特に何事もなかったように登校した俺を待っていたのは、金曜日までとは態度が変わった廣瀬だった。
「おっはよー、雨音」
いつも通り篠崎と喋っていると廣瀬が元気よく挨拶してきた。
「あぁ、おはよ」
えっ、なに? 怖いんだけど俺なんかした? なんで突然絡んでくるの? 今までそんなこと一度もなかったでしょ? クラスのやつらも驚いてかこっち見てるし、俺と話していた篠崎に関しては呆然とこっちを見てくるし。
「あー、えっと、またあとでね!」
バイバイ、と言いながら手を振ると、彼女は彼女の所属するグループへと戻っていった。言葉にしがたい空気だけを残して。いや、この状況どうするの? ねぇ、ちょっと。
「お前、いつの間に廣瀬と仲良くなったんだ? 向こうから男子に挨拶してるの初めて見たぞ」
ハッ、と言ってどこかに飛ばした意識を取り戻した篠崎が真っ先にこう言った。篠崎の質問に対する答えを待つように教室の視線が俺に集中する。やめて、俺もまだ何も分かってないから。
「まあ、ちょっとあったんだよ」
「そんなんは分かってるんだよ。そのちょっとが知りたいんだよ」
こちらを見ている生徒たちもうんうんと頷く。いや、君たち仲いいな。
なんと返そうか、と悩んでいるとHRの始まりを告げるチャイムが鳴り担任が入ってきた。とりあえず延命はされたみたいだ。
しかし何の目的があるんだろうか? まさか、罰ゲームだと見抜かれたことをプライドが許さなかったから、あの何とも言えない視線を浴びさせることで俺がこの教室にいづらい状況を作ろうとしているのか? これが隙を生じぬ二段構えだというのか。廣瀬芽衣、恐ろしい女だ。
廣瀬の行動の理由を考えながら授業を過ごし、10分休みはとにかく身を隠してを続けて、昼休みがやってきた。
「ねえ、雨音! 雨音はお昼どうするの?」
手を洗い教室に戻ってくると、俺の机の前で廣瀬が待ち伏せをしていて声を掛けられる。
クソっ、昼休みまで来るのか? もう謝るから許してくれよ。まあ、そんなことをいう勇気もないので質問に答えておくが。
「
鞄から弁当が入った巾着を出して見せる。
「曖昧弁当ってなんだ?」
手洗いを終えて戻ってきた篠崎が廣瀬の後ろから会話に入ってくる。
「違うから、俺の弁当をそんな
「いや、でも曖昧弁当なんだろ?」
「開けてみればわかるんじゃない?」
そう言って、廣瀬は巾着から弁当箱を取り出して蓋を開けた。
「何が曖昧なんだ? めっちゃ見栄えも良いしうまそうだけど」
「妹、
あぁ、思い出しただけでも辛くなってきた。去年まではお兄ちゃんの作るお弁当は綺麗だし、美味しいし、好き! って毎日残さず食べて言ってたのに。
「愛妹ってそういうことか。でも妹ちゃんがお前のために作ったのをそういうんじゃないの?」
「細かいことはいいんだよ」
「これ全部雨音が作ったの?」
「えっ、まあそうだけど」
そういうと廣瀬はへぇー、と言いながら元気なさげに彼女の属するグループに戻っていった。
「でも足りないんじゃないか? その弁当箱どう考えても女子用だろ。色もサイズも」
「まあ、あくまで祐奈のために作ったのだしな。まあ食い終わったら飲み物買いに購買行くし、そん時に軽くパンとか買ってくる」
「ほーん」
「ところで休み明け試験の結果はどうだったんだ?」
廣瀬とのことを深堀りされたくない俺は、この間受けて先ほど返ってきたばかりの試験の話を振っておく。
運動神経抜群で顔も良い篠崎だが、頭が非常に残念で進級できたのが不思議なレベル。高校入試を突破しそれなりの進学校であるこの高校に入ってきたのは、この学校の七不思議のひとつだと言われたら、疑う事もせず納得するだろう。
俺の思惑通り篠崎の顔色は青くなり、いつもの
俺が弁当箱の中身を空にしたことを確認した篠崎は、どこからともなく5枚の回答用紙を出してきた。5枚中3枚に再試の文字が書かれていて、他の2枚については再試は出来ないとの趣旨のメモと課題のプリントがクリップで留められていた。
どうやら全滅らしい。春休みに何をしていたんだろうかこの男は。
「助けてくれ、留年する」
切実に助けを求める声だった。助けてほしくば土下座しろ、と言えばあっさり土下座するレベル。
新年度早々友人の口から留年するという言葉を聞くことになるとはな……。まだひと月も経ってないんだぞ。
「購買行った後でいいなら見てやる。再試早い順に教えるからわからん範囲まとめとけ」
ものすごい勢いで首を縦に振った篠崎は自分のロッカーへと駆けて行った。いや、赤点取るくせに置き勉してんのかよ。やる気ないんじゃないか? まあ俺は篠崎がどうなろうと困らないからいいけど。
まあ、購買で買うのは教えながら食えそうなのにしておこう。
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