第11話 いきなりのピンチ
「失礼します。部活の見学に来ました」
「あ! じゅん、待ってた……よ」
翌日の放課後、部室でじゅんを待っていた私は想定外の出来事に一瞬フリーズする。
「あ、
「
ひょっこりとじゅんの後ろから可憐ちゃんが顔を出す。
なんと、可憐ちゃんもじゅんと一緒に部活の見学に来たのだ。
なんたる誤算……
可憐ちゃんも部活に来ることはまったく想定していなかった。
じゅんと一緒に部活ができれば距離も縮まるし、可憐ちゃんと引き離せると思ったのに……
これでは私とじゅんの距離が縮まるどころか可憐ちゃんとじゅんの距離が縮まってしまうかもしれない。
こ、これはかなりピンチなのでは?!
「ボ、ボランティアブへヨ、ヨウコソ」
「ど、どうした? 香織。めちゃくちゃカタコトだぞ?!」
「な、なんでもない」
しまった、動揺が隠しきれていなかった。
「ど、どうして可憐ちゃんもいるの?」
私は可憐ちゃんに聞こえないようにじゅんに尋ねる。
「実は――」
*
時は遡ること昨日の事
「――と言うわけで、明日部活の見学に行くことになったんだよね」
放課後、いつものように図書室で
「部活ですか? いいですね!」
「そう言えば可憐ってまだ部活入ってないよね? 何か部活に入らないの?」
可憐は放課後毎日のように図書室にいるため、おそらく部活に入っていないのだろう。
「私、中学の頃は部活ができなかったので、実はすごく部活に興味があったんですけど、どこの部活の勧誘も圧がすごくて結局どこにも入れなかったんですよね……」
「あぁ……」
俺は全てを察した。
血眼で可憐を勧誘する男子生徒の顔が目に浮かぶ。
もし仮に可憐がマネージャーにでもなったら、今頃可憐目当ての部員で溢れかえっていることだろう。
可憐の額を見ると、真っ赤なしょんぼりマークの絵文字がはっきりと浮かび上がっていた。
本当は部活に入りたかったのだろう。
そう言えば、可憐は中学の頃はかなり体が弱かったらしく、ろくに学校に行けていなかったと言っていたため、部活に対する憧れが余計に強いのかもしれない。
「もし良かったら明日一緒に見学行ってみる?」
「いいんですか?!」
俺がそう聞くと可憐の額のマークが真っ赤なニコニコマークに変わる。
こうして俺と可憐は一緒にボランティア部の見学に行くことになったのだった。
*
「――ということがあって」
「ぐぬぬ……」
そんな話をされたら可憐ちゃんを追い返すなんて事は到底できるわけがない。
むしろこっちがが来てくれと言いたいくらいだ。
「とりあえず、部長達がまだ来てないから、他のメンバーが集まるまでゆっくりしててね。誘っておいてなんだけど、私もまだ入ったばっかりでわからないこと多いから詳しいことはあとで説明するね」
ボランティア部の部長は私が中学の頃入っていたソフトテニス部の先輩で、入学式で私を見るやいなや部員が足りないと泣きついて半ば強制的に入部することになったため、私はボランティア部についてまだ知らないことが多い。
説明は先輩に任せた方がいいだろう。
新しい部員が増えるかもしれないと知ったら、多分泣くほど喜んで説明してくれると思う。
ボランティア部の部室は普通の教室なのだが、畳が敷いてあり、上履きを脱いでくつろげるようになっている。
これは去年ボランティアで地域の公民館の畳を交換したときに古くなったものを部長が貰ってきて敷いたものらしい。
教室の中心には少し大きめのちゃぶ台が置いてあり、それを囲うように座布団が敷いてあるため若干和室のような雰囲気がある。
とは言っても黒板や窓はそのままのため、少し奇妙な空間である。
私はみんなで持ち寄っているお菓子と、部費で買っている紅茶を二人に出しながら部長達が来るのを待つことにした。
そうだ、可憐ちゃんも一緒に部活に入れば可憐ちゃんの動向を監視できる。
それにじゅんと一緒に居られる時間が増える事には変わりない。
プラスに考えるんだ私!
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