第190話 領内紹介。2

「それではまずはチャオさんがこれから住むお屋敷の紹介です。」

 十全は屋敷に着いて、最初に門の前でチャオを下ろした。

 そこから玄関までの距離はそう遠くない。

 歩いて2~3分だ。

 平成の世からしたら遠いだろうと思われるだろうが、中世の価値観の人にとっては領地貴族の屋敷にしては短い方だと思うだろう。

 そして門前で下ろしたのは前庭を見せるためであった。

 最近、街が形になってきたのもあって屋敷の装飾にもこだわってきたのである。

 その1つが庭である。

 屋敷の中はウルトゥム率いるメイドたちにほぼほぼ支配されているため、男性使用人に庭づくりを指示してみたのである。

 その出来栄えはなかなかのものでので、せっかくならまずはその庭を見てもらおうと思ったのである。

「あの、私も同行してもいいのですか。」

 と、チャオのお付きのモンペチが聞いてくるが、当たり前である。

 彼女はチャオの傍にいてもらい、仕事は十全の家のメイドが務める。

 彼女はメイド服を着ているが、どちらかと言うと秘書である。

「と、いう訳なのでご一緒に庭を見ていってください。」

 そう言って門を開いて2人を案内した。


「ほーう、これはまた。」

「立派ですね。」

 門をくぐって最初に2人の目に入ったのは。

「素晴らしい噴水ですね。」

「立派なお屋敷。」

 別のモノだった。

 さ~て、チャオさんが申し訳なさそうにしているぞ。

 モンペチさんなんて顔が真っ青だ。

「ははは、それは良かった。噴水も屋敷もお眼鏡にかかったようだ。」

 と言ってフォローしておく。

 これで2人はホッとした顔をしていた。

「お2人共、ここでは社交辞令話はなしでいいですよ。下手にこちらに気を使われるより、素直に楽しんでもらえた方が何倍も誇らしい。」

「――――!」

 チャオは驚いたような顔をして十全の顔を見た。

 十全としては素直に本音をぶつけたつもりだったのだが。

(これは1本取られましたね。相手に気遣いをさせないことで自身の余裕ぶりを見せつけって来るとは。下手な貴族にはできないことだな。)

「ささ、まずは庭でも眺めながら屋敷に行きましょう。」

 十全の案内で屋敷に向かう2人。

 前庭の中央には大きな噴水と池が存在していた。

 白く輝く材質で女神のようなモノが水遊びをしているさまが表現をされていた。

 そんな風にチャオには見えてい居た。

 だが実際には違った。

 デザインは十全が用意したもの、実は好きなアニメのキャラクターを作らせていたのだった。

 最近はウィズによる入荷が好調でアニメも漫画も潤沢に仕入れられる。

 その中で自分が死んだ後の作品も見れるようになり、最近ハマったとあるアイドルアニメのヒロインで作らせたものだ。

 そして、それは女神などでは無くて、ゾンビのアイドルだということをチャオたちはまだ知らなかった。

 ゾンビでアイドルで、そして伝説たるその少女たちの姿を見ながら、チャオは大和の文化に感じるものがあった。

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