第184話 ウルタール王国からの使者。4

 赤と白で彩られた扉が開かれる。

 中は広々とした洋室で、調度品も含めて全体が白を基調とした清潔感のある部屋だった。

 その部屋の中、ちょうど真ん中あたりにあるソファに座る2人の人物が居た。

 2人はこちらに気が付くと立ち上がって礼をしてきた。

 1人は男性。

 白い王子さまのような例服を着ている。

 髪はカラメル色で、毛先がはねている。

 顔は中性的であごが小さく、目元はくっきりとしていて瞳は青色。

 その眼をメタリックブルーのフレームで出来た眼鏡が彩る。

 また、鍛えられているのかスラリと細い体形ながら、芯はしっかりとしてぶれることが無かった。

 もう一人はメイド服を着た女性だ。

 黒髪をセミロングにしていて、クラシカルなメイド服に身を包んだ小柄な女性。

 視線は伏し目がちで、男性の一歩後ろに控えるような立ち位置に居ることから、男性のお付きであろう。

 そして、2人の頭にはしっかりと猫耳が付いていた。


 話には聞いていたが、ウルタール王国は人口の大半が猫人族カッツェであるらしい。

 また、多くのネコも住んでいる星だそうだ。

 その国からの使者である二人も、やはりカッツェなのだろう。


「お待たせしました。」

「いえいえ、素晴らしい調度品に見とれていて時間を忘れてしまっていましたので。」

「ありがとうございます。どれも大和の伝統工芸です。良ければお土産にお1つ。」

「ありがとうございます。ですがそれは仕事を終えてからにいたしますね。」

 と、紅玉帝陛下と使者の男性が挨拶を交わす。

(陛下さっきと全然態度が違う。)

(言うな。外行きの為にネコ被ってるんだろ。)

(カッツェ相手だけに。)

 陛下の後ろでばっれないように内緒話を十全と暁が交わしていると。

「松永卿。」

 十全が陛下に呼ばれた。

「はい。」

 別に内緒話がばれたわけでは無い。

「こちらに。」

「はっ。」

 紹介の為に前に出ろということだ。

「こちらが大和帝国で御身の腰を置くことになるフルボッキ領の領主、松永・フルボッキ・十全子爵である。今は子爵だが街の発展が進めば伯爵や侯爵にも上げる予定です。」

 と、陛下に紹介されるのだが、陛下の喋り方が真面目モードだけに背筋がかゆくなる十全だった。

「初めまして。松永・フルボッキ・十全です。」

 ミドルネームのフルボッキも恥ずかしがらずに言えるようになった。慣れたくはなかったが。

「で、そちらに居るのが松永卿の側室でもある東雲 暁です。」

「よろしくお願いします。」

「2人共、我が国の軍人でもあります。彼らがお2人の安全を確約してくれるでしょう。」

「どうぞお任せください。」

「ありがとう。」

「そしてこちらの方がウルタール王国から参られたチャオ・チュール殿だ。」

「初めまして。チャオ・チュールです。母国では魔法の研究をしています。これが大和との更なる発展につながることを期待します。」

 そう言ってチャオは手を差し出してきた。その手は剣を握ったことなどないかのようなきれいな手のひらをしていた。

「大和では挨拶に握手をするのでしょう。」

「ええ。」

 そう言われて十全はチャオと握手を交わした。


「ごつごつしていてイイ。」


「はい?」


「いえ何でもないです。」

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