第170話 閑話、ハンバーグ。2
「という訳で、やってきました。食材の宝庫”山”。」
とウルトゥムが嬉しそうにはしゃいでいた。
今、十全とウルトゥムはハンバーグの一番重要な肉の調達に山に来ていた。
「狙うのは野生の豚と野生の牛ですかね。」
「できればそうしたいけど。」
「どうしたのですか、なんかげんなりしてますが。」
と、ウルトゥムが十全に問いかける。
「いやな、俺の感覚から言うと牛や豚の野生って違和感があってな。」
「ん?家畜が野生化したりするでしょう。」
「牛や豚では聞いたことが無いな。野生の時点で別の生き物の気がするし。」
「そうですか。地球には野生の豚や牛はいないのですか。」
若干しょんぼりするウルトゥムに慌てて十全が付け足す。
「いやこれも平成の感覚だから、もしかしたら今の地球なら野生化した元家畜の豚とかいるかもしれないし。」
「ですがそれなら騎士団の調査で報告があるはずです。」
「う、――――いや、実は今回来たこの辺りはまだ不完全だ。可能性はある。」
というか、もう少し北の琵琶湖周辺ならば、近江牛の牧場もあったし、野生化した牛の存在も可能性が高いはずだ。
「それじゃあ調査を始めるが、ウルトゥムさん本格的ですね。」
山の中ではぐれたら何処の居るのか分からなくなりそうなぐらい、ウルトゥムはガチのギリースーツを着用していた。
詳しく言うと、迷彩柄の服に草木なんかをくっつけて茂みと一体化する格好をしていらっしゃる。
そして手には槍を持っている。
そう言えば。
この世界では弓矢や銃などの飛び道具が有効にならない。
ならば狩りだって近づいての白兵戦での狩りになるのが必然。
そんなことも知らない素人なのが十全である。
そしてそのことに気が付いた十全はウルトゥムに聞いてみた。
「ウルトゥムは狩りの経験があるのか。」
「いいえ、ですが狩りの得意なメイドにいろいろお聞いております。」
「狩りの得意なメイド?え、メイドにそんな子がいるの。」
「居ますよ。なかなか気も効く有能な娘です。」
「なかなかにメイドの人材が豊富だな。」
「彼女を連れて来た方が良かったですか。」
「そうだな。やっぱり狩りは危険だとも聞くし、経験者が居た方が良かったかもしれないな。」
「そうですか。」
シュンとするウルトゥム。
「どうしたんだ。」
「いえ、折角ですしミツルと2人でデートがしたかったんです。」
「お、おう。そうだったのか。すまん、気づかなくって。」
てか、デートで狩りってありなのか。
いやまあ、中世の貴族ならキツネ狩りとかやってたって聞くし、ボリアの貴族的にはアリなのか。
十全はそう考えて。
「とりあえず、今日は2人でやってみよう。上手くいかなっかたら後日そのメイドを連れて狩りに来よう。」
「そうですねそうしましょう。」
ここ最近、少し時間がとれたし、ウルトゥムとの時間に割くのも悪くはないと考えてのセリフだった。
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