第三章 特産品展編

第149話 クームの受難。1

 クーム・オニックスはボリア帝国から来た使者にして、大和帝国への魔法の教導官でもある。

 そんな彼女の仕事は――――


 全く無かった。


 まだ開拓中の街であり、皆が忙しそうに働いている中、クームは朝から晩まで喰っちゃ寝の生活をしていた。

 最初は使者に対してなかなかの優遇でいい気になっていたが、それが10日ほどすると飽きてきたのだ。

 娯楽もある。

 ご飯も美味しい。

 寝っ転がってマンガ読みながら食べるポテチとコーラは最高である。

 だけど、クームはもともと魔法の専門家で、特に研究畑の人間だったのだ。

 そんな人間が日がな一日怠惰に過ごすのは意外と疲れるものだ。

 正直何かしなければと思っている。

 ボリア人と思われる小さなメイドに「じー。」と見つめられたからじゃない。

 何か知らないけど、彼女の視線が痛いけど、決してそれが原因で働きたいといっているわけでは無い。

 そうじゃないったら。

 だからそんなじっと見ないで。


 という訳で、クームはこの地の領主であるあいつに相談してみようと思った。

 別にアイツのことを頼っているわけでは無いんだからね。

 でも、ヤーガはここ最近毎日どっかに遊びに行っているし。

 ウルトゥム様に相談するのは畏れ多いし。

 小さいメイドさんは、「はっ。」っと鼻で笑われて見下してくる。てか、ホントはメイドにそんなことされたら腹が立ちそうなものだが、なぜか文句が言えない。

 ワタシの中にある本能が「ヤツはヤバイ。」とささやいてくるのだ。

 あの子って何者?


 そうゆう訳でアイツのところに来ました。

「そうですか、では少々お待ちください。」

 きゃぁ~、ウルトゥム様と、皇族の方とお話しできちゃった。嬉し~。



 十全にはやることがいっぱいある。

 しかし、それらを他人に任せられるモノは任せていけ、と紅玉帝陛下からの指導を受けて、現在その為のプランを練っているところであった。

 その為の相談役も何人かいるが、今は魔法関係の指導をしてくれる施設の設計についてを最優先で進めている。

 他の分野の皆も気になるのか付き合ってくれて、沢山の意見をもらえている。


「魔法の指導って実技と座学がある訳でしょ。その人員はどうするの。」

「ヤーガとクームが見ていくつもり。」

「だが、ウルタール王国からも人材が派遣されることになったんだよ。」

「ウルタールってカダス連邦で一番偉い国でしょ。ボリア帝国とは仲悪いんじゃ。」

「ヤーガはそのようなしがらみ気にしません。」

「そこらへんは向こうの使者が来てから考えるとして、施設の設計が一番大事だ。」

「どれくらいの人数を入れるつもり。」

「最初は100人は居ればいいぐらいだけど、今後のことを考えると拡張性はほしいな。」

「立地は周りに施設の予定がないところがイイかもね。」

「専用のインフララインを作ることになるけどいいか。」

「問題ない、まかせとき。」

「それなら――――


 こんこん。


「すみませんご主人様。」

「ウルトゥムか、どうした。」

「会議中ですけど面会を求めているモノが居ます、お時間少々いいですか。」

「ふむ。それじゃあついでに休憩入れるか。」

 十全は集まったみんなに確認を取ってから答えた。

「入れていいよ。」

「失礼します。」

 ウルトゥムに連れてこられたのはクームだった。


 後なぜか熱湯コマーシャルのセットも用意された。

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