第147話 異界の真実。3

「まぁ、魔王とはいっても安心スルネ。アタシ敵じゃないね。」

 デブはそう言って懐から葉巻を取り出すとくわえて、指をパチンと鳴らして葉巻に火を付けた。

「大和に六覚顕聖イルネ。アタシアレの友達ネ。」

 独特のチャイニーズイントネーションでしゃべり続けるデブに、十全は訊ねてみた。

「それで、タオさんはこの世界の卵?異界の卵?」

「どっちでも好きに呼ぶといいアル。」

「この異界の卵のこと詳しいのですか?」

「なんね、ソレのこと知らずに来たアルネ。チャンシェンも人がワルイネ。」

「できれば教えてもらってもいいですか。」

「ふむ。まぁ、これも何かの縁ネ。良いアルよ。」

「それでは、これは具体的に何なのですか。」

「簡単ネ。ソレ、そのまんまの意味で世界、異世界の元に成るネ。ダンジョンコア、言うやつも居るアル。」


 ダンジョンコア、そう聞いて十全は何となくこれが何なのか分かって来た。


「これは壊した方がいいのですか。」

「アイヤー、モッタイナイアルネ。これは上手く管理すれば、異世界の資源を手に入れたり、研究の役に立ったりスルネ。」

「ってことは、これを使えばお菓子がたくさん採れるってことか。」

「お菓子?」

「ええ、さっきまでこの辺りはケーキみたいなお菓子で出来た世界でした。」

「なんね、アタシ甘いの好きじゃないね。いらないアルネ。」

「タオさんはこれが目的だったんですか。」

「アタシ、珍しい物コレクションしてるアルネ。異界の卵も集めてるアル。買い取ろうかと思たアルけど、いらないね。」

「では、これの管理の仕方は――――」

「それはただでは教えられないネ。色々都合があるノヨ。チャンシェンにでも聞くといいネ。」

「チャンシェンって誰ですか?」

「六覚顕聖ネ。今はどう名乗ってるか知らないケド、前はソウ名乗ってたネ。」

 (多分師匠のことだろう。)と思い至る十全は、

「タオさんはこの後どうするのですか。」

「どうとは?」

「いえ、大和に寄るのか。」

「それはやめておくね。絶対にメンドーな事になるネ。」

「では――――」

「アタシは気ままに旅をするネ。」

「そうですか。」

「じゃあここでお別れネ。それじゃあアミーゴ。」

 そう言うとデブは首にかけていたマフラーを掴むと、ブンッ!と振ったかと思うと、その場から幻のように消えていた。



「それじゃぁ、けが人や欠員は居ないな。」

「はい。全員揃ってます。」

「それじゃあここでもう一晩野営を行いながら、周辺の調査。その後、この世界の卵とやらを帝都に運ぶぞ。」

「兄さん、一つ良い。」

「なんだ暁。」

「これって、ちゃんと管理しないと危険ぽいじゃない。このまま帝都に持って行っていいのかな。」

「つまり?」

「いったん兄さんが預かって、帝都からの指示を仰いだ方がいいと思うんだけど。」

「暁よ、お前分かってないなぁ~。」

「何をよ。」

「そんなことしたら絶対に俺任せになるじゃん。俺のところで管理しろって。」

「でもやり方分からないって言えば。」

「あの人たちは教えてでもやらせる。」

「じゃぁ、帝都に持って行っても同じだと思うな。」

「分かっている。でも、そっちの方がまだ可能性はある。」

 ってことで、帝都行きが決まった。

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