第134話 ボリアの使者。6

「改めてじゃ、こちらの赤髪の少女がクーム・オニックスである。」

「改めまして、クーム・オニックスよ。」

 赤い髪に青い瞳をした勝気な表情の少女。

「よろしくお願いします。」

「よろしくしてあげるわ。」

 炎のようなイメージの少女はその口を開けば八重歯がのぞいていた。

「でも勘違いしないでよね。クームたちは魔法を教える代わりにそちらの「カガク」というものを習いに来たのよ。それだけの関係なんだから。さっきのコントみたいなことはこれっきりよ。いいわね、気安く話しかけるんじゃなわよ。」

 と、十全が遠野 秋〇役のひ〇みさんみたいな声だなぁ。と思っているそのセリフからツンがのぞいていた。


「そしてこちらがヤーガ・オニックスじゃ。」

 続いて紹介されたのが青い髪を太い三つ編みにして背後に垂らしている、表情が眠そうな少女だった。

 そして、クームとヤーガは色違いのドレスを着ていた。


 陛下が言ったパジャマパーティーと聞いて本気にして寝間着で来ているのは、――――着流しの師匠は普通に私服っぽいし、ヴォルテールに限っては裸族だから寝間着どころではない。

 そのヴォルテールも今はちゃんと何時もの執事服を着ている。


 それでもヤーガのドレスはなかなかに薄着で、肌の露出が多いモノであって、こう近づかれると――――

「初めまして。ヤーガって言います。」

 十全より頭一つ分背が低いヤーガは下から十全の顔を覗き込むように話しかけて来た。

「貴方がミツルさんですね。先の戦いでウルトゥム様を落としたという。」

「あぁ。」

「こら、ヤーガ。近づき過ぎだぞ。」

 と、ヤーガと双子だけあって同じくらいの背丈のクームがヤーガを引きはがそうと腕を組んでいた。

 そうして並ぶと――――(双子なのにスタイルに差が。)

 具体的に言うとクームの方が残念なのだ。どこがとは言わないでおくが。


「クーム。ヤーガはクームと違ってミツルさんとよろしくしたいのです。ボッチが好きなクームはどいててください。」

 平淡で、しかし色気のある声のヤーガ、声優さんなら誰が似てるだろうか。こう、はんなり京言葉が似合いそうなんだが。

 十全がそんなことを考えている間にクームを追い払ったヤーガが改めて近づいて来た。

 今度は腕も絡めてくる。

「いいのか、姉……ん?妹?」

「さぁて、どっちでしょう。」

「まあその、クームのことほっておいて。」

「いいんですよ。ヤーガが友人とご飯食べてたらいつも一人でご飯食べてるほどボッチが好きな子ですから。」

「別に好きじゃないし。」

「ふふふ。」

 なるほど、何となく2人の関係が分かったような気がする。

「それよりもヤーガはミツルさんのことを教えてほしいな。」

「俺のことをか。」

「そうですよ。これから互いにモテる、もとい、持てる知識を交換していくボリアと大和のかすがいになるヒトですよ。よろしくしたいじゃないですか。色々と。」


「おまえらぁ~。そういうのは2人きりなり自分の家なりでしろ~。」

 陛下にたしなめられた。

「そう言うことだから。」

「分かりました。ふふ、この後も時間は作れますもんね。今度は奥様も紹介してください。」

 そう言って離れて行くヤーガ。

 どうやら何か含むことがあるようだ。

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