第133話 ボリアの使者。5

 双子はその後止める間もなく服を脱ぎだして、ふんどし一丁でポーズを決めるヴォルテールの前で全裸土下座をかましたのだった。


「ウルトゥムがこの場に居たら、「これだからボリア帝国は、」って愚痴りそうだな。」

「そうじゃのう。しかしこのままほっておくわけにはいかんし、そろそろどうにかせい。」

「自分に丸投げっすか。」

 十全はしばし考えて、

「ヴォルテール、いい加減服を着ろ。ついでにそっちの2人にも服を着せろ。」

「かしこまりました。」

「待ってほしい、クームたちはまだ――――。」

「そう、全裸土下座をしないと――――。」

「2人共。」

 ヴォルテールがまだ全裸土下座をしようとする2人に、肩をポンと叩いてにこやかに告げた。

「ご主人様に余計な手間かけさせるんじゃありません。」

「「は、はい!」」

「ケツを振るならベッドの中にしなさい。まぁ、ご主人様は脱がせるところからがお好きなので、服は着たままで行くべきですが。」

「おい、そこの駄竜。何言ってんだ。」

「「分かりました。」」

「そっちの2人も何納得してんだ。」


「ハイハイ、そこまでなのじゃ。」

 陛下が手をパンパンと鳴らしながら、止めに入って来た。

「まったく、十全に任したら一緒にコントを始めるとか。ほんとにパーティーの前座ではないか。」

「……すみません。」

「いえ、ご主人様が謝るところではありません。拙がふざけすぎたのです。」

「いえ、悪いのはクームです。知らぬことだったとはいえヴォルテール様に失礼を働いてしまいました。どうか罰はこのクームに下してください。」

「いえ、クームは悪くない。悪いのはクームを煽ったヤーガにある。罰はヤーガに。」

「いえ、ここは拙が受けるべきです。」

「いえいえいえ、クームですってば。」

「いやヤーガが。」

「いやいやいや、」

「いえいえいえ、」

「ですから、」


「じゃぁここは俺がやる。」


 と、十全が手を上げたら。

「「「どうぞどうぞどうぞどうぞ。」」」

「なんでだよ!」

 互いに自分がと言っていた3人が仲良く手のひらを返してきた。

 それはホントに綺麗にハマり、懐かしさを感じるほどだった。

 だがなんでこいつらがダチョウを知っているんだよ。

「いやぁ~、なんて言いますか?」

「ヤーガはこうしなきゃいけないという何かを感じた。」

「はっはっは、これがご主人様の言っていたお約束というやつですかな。」

 お約束、おそるべし。


「まったく、全然話が始められんではないか。」

 陛下が珍しく困り顔だった。

 その後で師匠が腹を抱えて笑い転げていた。

「はいはい、コントはしまいじゃ。ちゃっちゃと話を始めるぞ。」

 そう言って女給たちにお茶の準備を始めさせた。

 それを見て、なおさら場面転換がコントみたいになっているように感じた。


「でじゃ、まずはこちらから、こっちの笑い転げているのが大和最強の六覚顕聖の穿 一心斎じゃ。で、こっちの笑わせたヤツがその弟子の松永 十全じゃ。それでこっちの2人がボリアからの使者であるクーム・オニックスとヤーガ・オニックスじゃ。」

 陛下から紹介された2人はさっきまでのコントが無かったようにきりりとした顔つきで、十全を値踏みするように見つめてきていた。

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