第132話 ボリアの使者。4

「あんたが大和の英雄、ははは、なぁんてみすぼらしい恰好なのかしら。」

 赤い髪をツインテールにしている少女は開口一番にそうのたまった。


 ボリア帝国の使者とされる双子の姉妹。

 褐色の肌をしている耳の長い美少女。

 分かりやすくゆうとダークエルフである。

 そして姉妹は赤い髪をツインテールにした青い瞳の少女と、青い髪を太い三つ編みにした赤い瞳の少女。

 確か名前はクームとヤーガ。

 その内の勝気な顔立ちの赤いツインテがテンプレ的なツンデレのセリフを招待された大和のパーティーで声高々に口にした。

 そんな彼女を笑ってはいけないだろう。


 たとえ彼女が指さして蔑んだ相手が赤ふん一丁で自慢の筋肉を披露している、ボリア帝国の象徴である帝竜のヴォルテールだったとしても。


「おい、ボケテール。お前がさっさと服を着ないからお客さんが来ちゃったじゃないか。」

「はっはっはっ、これは拙としたことがお恥ずかしいところをお見せしてしまいました。」

「そもそもなんで裸になってんだよ。」

「パジャマパーリーなるモノが寝る時の恰好で行うものと聞いたので、拙はそう言うもモノならばといつもどおり寝る時の恰好でお出迎えしたまでですぞ。」

「お前が裸族なのはいいが、他国の使者を招くのに裸はまずいと思わなかったのか。」

「今更になって、やべーな~、と思ってます。」

 十全がヴォルテールにツッコミを入れている間、何かをこらえるようにプルプルしていた赤髪の方が叫び出した。

「これはどういうつもりですか。はんっ、流石はおつむの足りないおサルさんですわね。こんな客人の迎え方をするなんて。」

 怒気を目に浮かべた赤髪が蔑むように十全たちを睨みつける。

 とくにヴォルテールを。

 そんな赤髪の袖を引いて青髪がなだめに入る。

「クーム、クーム。怒っちゃダメ。」

 赤髪の方がクームと呼ばれたので青髪の方がヤーガだろう。

 ヤーガはフラットな表情で、かつ抑揚のない口調で話す。

「あの恥ずかしい恰好の人はたぶん道化師だよ。」

「道化師?」

「うん、でなきゃ頭のおかしなお爺さんだよ。たぶん、道化師なんかに滑稽な恰好をさせて笑いものにして客人を楽しませるところから入って、場を温めてからパティ―をするのが大和のやり方なんだよ。多分、アレは大和1番の道化師だよ。」

「おお、なるほど。てっきり馬鹿にされてるのかと思ったものだぞ。これもパティ―の趣向だったとは。流石はヤーガ。よく見抜いたな。」

「へへへ、それほどでもないよ。」

 と、2人で勝手に勘違いをして、クームはヤーガをほめちぎり、ヤーガはフラットな表情ながら照れていらっしゃった。

「うむ、大和の気持ちは分かった。しかし我々も女なのだ。流石にそのいかれた格好は見苦しい。道化師を下げてくれ。」

「………………………………………………………………。」

 十全が困った顔をして、皆の顔を見る。

 クームとヤーガはドヤ顔。

 ヴォルテールの野郎もドヤ顔。

 陛下は後ろを向いて腹を抱えている。

 師匠はニヤニヤしながら、「お前が言えよ。」と言って肘で突っついてくる。

「…………え~と、引っ込めろと言われればそうしますが。」

「なんだ。」

「その前にこいつの紹介を。」

「ああ、道化師の紹介か、いいだろう憶えておくので紹介せよ。」

「こいつはボリア帝国の象徴の帝竜が一匹で、先の戦いで大和の捕虜になって、今はうちで執事をしてるヴォルテールです。」

「どうもボルテールです。お久しぶりですね。拙のこと覚えていませんか。ちなみにこの頭の悪い恰好は拙の趣味です。」

 と、話していくうちに双子の顏が青くなっていき。

 ヴォルテールは筋肉を見せつけるようにポーズをとった。

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