第117話 良い知らせと悪い知らせ、どっちがいい?
側室になった3人を相手したあの日から時は過ぎていった。
季節は夏から秋に変わり、領地の周りにも変化が訪れた。
特に森の木々は多くの果物が熟れてきて、食料になっている。
そしてそれらを食べている動物たちも冬に備えて脂がのってきている。
十全たち人間もそんな動物たちを狩っては冬への貯えにしている。
そんな中、もう一つ大きな変化があった。
「陛下、いい報告と悪い報告がありますがどっちから聞きますか。」
十全は通信機で隊長に報告しようとして、相変わらずの陛下への直通ぷりにも、もう驚かなくなって開口一番にそう切り出した。
『なんじゃ、その使い古されたような出だしは。』
「一種のお約束ってやつですよ。」
『あれかの、『じ~んせい楽ありゃ、苦~もあるさ~。』とかいうやつ。』
陛下が水戸黄門のテーマ曲を口ずさんでいるけど、コレが以外にも上手い。
『そうじゃろ、そうじゃろ。おぬしがこの前送って来た「からおけ」なるモノで練習したのじゃ。アレはいいモノじゃな。一般にも普及させるようにしたぞ。』
「ありがとうございます。喜んでいただけて、光栄です。」
『うむ、それでじゃが、良い報告と悪い報告があるのじゃな。』
「はい。どっちからにしますか?」
『うぅぅ~~む、悪い方からにしておこうかな。対策は早めの方が良さそうじゃし。』
「では、悪い方から。」
『まった、――――――それって怖い系じゃないじゃろうな。』
「いえ、そもそも怪談の季節は過ぎましたよ。」
『そうなのじゃが、――――この前夜遅くまで遊んでおったら、朱居の奴に怖い話をされての。』
(何やってんですか、朱居さんも大変ですね。)
「別に怪談話ってわけでは無いですよ。」
『そうか、ならば安心じゃな。続けるがよい。』
「では。まずは以前から上がっていた電力の確保についてですが、ここより少し北にある淀川に治水も兼ねたダムを作ろうかと思いまして。」
『ふむ。それは構わんぞ。おぬしの領内なら許可を取らなくてもやればよかろう。』
「一応報告はするつもりでしたが、今回は別件のついでです。」
『ふむ、何か問題でも?』
「だから悪い知らせなんですよ。この建設の予定地の下見をやったんですが、気になる報告があって自分も確かめに行きました。」
『なんじゃ。気になるモノとは。』
「明らかに生態系のバランスがおかしいんですよ。で知らべに行ってみたら、周辺の環境が全く別物になっていたんです。」
『具体的にゆうと。』
「外からの観測と、境界を超えた内部での観測とで、空間内部の観測値が明らかに異常を出しました。ハッキリ言うと別世界になっていました。」
『それはまことか。』
「嘘言ってどうするんですか。それで、ここを放置するのはヤバそうなので本格的に調査したいんですが、とりあえず軍部の一個中隊回してくれませんか。」
『それほど必要か。』
「軽く調べた結果ですがヤバめですね。舐めないほうがいいと思えるレベルです。」
『お主がそういうレベルか、確かに悪い知らせじゃな。分かった。手配しておこうぞ。――――して、良い知らせとは?』
「ウルトゥムが懐妊しました。」
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