第83話 ボリア皇帝のとある1日。2
「姉さま。おセナカおながしシマス。」
ニャルはそう言ってからウルトゥムの後ろに回った。
先ほどウルトゥムに背中を洗ってもらったので、そのお返しである。
というより、ニャルがウルトゥムの肌に触りたい。――――もとい、背中を洗ってあげたいのだ。
ウルトゥムの背後に立って、その背中を見下ろす。
今のウルトゥムは人前でしている大人の姿の擬態を解いて、本来の姿になっている。
その体は成人したというのにとても小さい。
姿を偽っている自分の今の身長よりも低い。
お風呂用の黄色い椅子に腰かけているウルトゥムはニャルよりも低い位置に頭がある。
今の小さい姿のニャルでも見下ろすことができるくらいに低い。
ボリアでの本来の姿からの目線にちかい見え方に、かつてのウルトゥムウの姿を思い出す。
小さい体。それ以上に自分を隠そうとする卑屈な姿勢。顔も俯きぱなっしで、人の顔など全く見ようとしなかった。
しかし、今はその背中が大きくなったように感じる。
けっして
自分たちの前には鏡がある。
そこには2人の姿が映っている。
自信をもって、顔を上げて生き生きとした表情のウルトゥム。
うつむきオドオドとしたニャル。
まるで立場が逆転したかのようだ。
…………いや、実際に立場は逆転しているのだ。
ここ、大和はウルトゥムの生きる世界であり、自分は異物であるのだから。
「――――フッ、ゃん。ちょっとニャル、何処触ってるの。」
「?――――おぉっと、これはすみません。ワタシとしたことが。」
ニャルは、ウルトゥムん脇の下から手を差し入れて、胸を揉んでいた。
「スミマセン。スミズミまで洗おうと思っていたから行き過ぎてシマいました。」
嘘である。
ニャルはウルトゥムのことが好きだ。それも性別を超えて、姉妹の域を超えてである。
胸を揉んだのは意図的だし、内心「デュフフフ。」と笑ってもいた。
しかし、表向きはしおらしく謝るニャルの姿にウルトゥムはすっかり騙されてしまい疑問を持たなかった。
(それにしてもウルトゥムの胸、少し大きくなってるわね。)と思いながら、ニャルは改めてウルトゥムを洗う。
細くてきれいな背中。
ウルトゥムの白い肌はニャルのあこがっれだった。自分の黒い肌とは違う初代皇帝と同じ白い肌。
一目見た時から惚れこみ、彼女を守ることを誓っている。
その思いは当のウルトゥムには伝わらないけど、今こうして共に居られることが幸せで、その為ならマジでボリアを捨ててもいいと思う。
「あの、ニャル。また胸を触ってるけど。」
「セカクですし、このまま体のスミズミまで洗いマス。」
そう言って胸を揉みしだくニャル。
「ハァン、――――大丈夫よ。前は自分で洗えますから。」
「イイデスから。イイデスから。」
ニャルはひとしきりウルトゥムの裸体を堪能してから、2人で湯船に浸かった。
ニャルにとってお風呂のお湯はちょっと熱いくらいで、少しのぼせ気味になりながらもウルトゥウと一緒のことにだらしなく顔が緩んでしまうのだった。
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