第82話 ボリア皇帝のとある1日。1
ボリア帝国の皇帝、ナイアー・アスト・ラル・ホートフの朝は
そこそこ早い。
その理由は大切な仕事があり、惰眠をむさぼっているわけにはいかないからである。
「―――っ、―――――さい。」
「う~ん、むにゃんうにゃ、――――あと、5分~。」
と、ベタな寝言を言っていたら布団をはぎ取られた。
「―――、朝ですよ。起きなさい。」
「うにゃあむ~に~、デフフ、ウルトゥム~。」
「こぉら、早く起きないとワタシ一人でお風呂入っちゃいますよ。」
「うにゃ?……って、だめデス。起きました。だから姉さま一緒にオフロはいりマショウ。」
「ハイハイ、それじゃあ支度しますよ。」
起こしに来たのはメイド服を着た紫色の髪をした女性。
彼女はナイアーの最愛の妹であるウルトゥム。
「それではメイド服はここに置いておきますから。」
「アリガトございマス。」
しかし、姉と妹の対場が逆転しているよううな感じになってしまっている。
それもそのはず。
今のナイアーはナイアーであってナイアーではない。
ニャル・シュタンというウルトゥムを追いかけて来たお付きのメイド、という設定の少女なのである。
ボリアの皇帝、ナイアーは今ボリア帝国に居ない。
今いるのは先日まで戦争をしていた敵国の大和帝国、その貴族の領主の館だった。
彼女は玉座を影武者の少女に任せ、政務は宰相のセベクに丸投げして、いつもはボリア帝国最強の騎士である黒騎士として過ごしてきた。
本来は初代と同じ白き肌を持つウルトゥムが玉座に着くべきと考えているナイアーの、大事な
白い肌を差別する輩なんかを粛正して、ウルトゥムが玉座に着く時の為に準備をしていたのだ。
―――まぁ、ナイアーの気持ちは全くウルトゥムウには伝わっていないのだが。(むしろ嫌われている。)
その一環に、ウルトゥムに箔を付けさせるべく、弱小惑星の侵略部隊の将にして、もしもの為にボリア帝国最大戦力のひとつである黒帝竜・ボルテールも護衛に付けて送り出しいた。
簡単に制圧できると思ったら、すっげー勢いで返り討ちにあって、ウルトゥムが捕虜になってしまった。
なんとしても取り返したところだったが、戦争でのそれはウルトゥムの命を危険にさらすとセベクに諭され、大和帝国と和平を結んで捕虜の返還してもらうことになった。
だが、ボリア帝国は大和帝国の地球人たちの扱いを奴隷などにしてないがしろにして来た。
負けた上に一方的にこちらだけ身柄を帰してもらうのは都合が悪く、交渉に時間がかかっていたら、ウルトゥムが大和の貴族に娶られてしまった。
ふざけんな!と、単身大和にウルトゥムの奪還に赴いたら、ウルトゥムに暗殺に来たと勘違いされて刃を向けられた。
それがショックでその場を逃げ出してしまい、落ち込んでいるところに1匹の悪魔が現れのだった。
その悪魔の提案はナイアーにとってはなかなか魅力的なこともあり、契約をした。
悪魔の力でウルトゥムの記憶を一部改ざんして、ニャル・シュタンという世話係がいたと錯覚させることに成功して、黒騎士としての相棒である生きた鎧「レン」の擬態能力を用いて、長い耳を隠し、体を幼い姿に変化させてウルトゥムの傍に潜り込むことに成功したのである。
当面ボリア帝国には帰れないだろうが――――まぁ、そこはセベクに任せておけばいいや、とナイアーことニャルはウルトゥムとの生活にワクワクしていたりする。
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