第80話ウルトゥムの日常。5
ワタシの夫、ミチルは今は昇進試験に向けての準備中である。
現在、大尉であり男爵という立場であるが、今後求められる立場に着くために、軍人として佐官以上に着くための将校過程を積む必要があるのだ。
とはいえ、ミチルが実家を勘当されるまでは将校に進む道に居たので基礎はできている。加えて、実戦経験も戦果もあるため将校に昇るのはそんなに難しくはないのだ。
ただ、一度無名となってからのたたき上げで昇進したばっかりというのもあって、周りに対しての根回しや準備が必要になっただけである。
紅玉帝陛下の助力もありさほど難しくはない。が、時間がかかるのである。
それと並行して領地の開拓も進めねばならない。
その為、時間が足りないのである。
となれば、妻であり夫の助けとなるべきワタシがすることは夫の代理となることだ。
むしろこれが今一番大事な仕事だろう。
メイド長として、身内に引き込む者の選別と教育はそのついでである。
主にこなすのは開拓作業の査察と現場での判断を超える状況に対して夫に代わって指示することである。
今日も補佐にニャルを連れて現場へと査察に向かった。
場所は屋敷からすでにかなりの広さの土地が開かれている。
地球人たちが使う機械という道具の力だ。
ヴィィィィィィィィィィィ!
響く音に身がすくんでしまう。
音の出所はチェーンソーという”武器”だ。恐ろしい音を響かせながら高速で回転する刃を持つそれは、太く固い大木の幹をいともたやすく切り裂いていってしまう。
今は開拓に使われているが先の戦争では多くの兵が鎧ごとこのチェーンソーによって体をバラバラにされていたのを見てしまった。
あれはひどい光景だった。
ミチルはワタシとの戦いでその武器を使わなかったし、刃の無い峰で打ち据えられたので大きな青あざが出来ただけで済んだが、あの武器で刻まれたらと思うと身の毛もよだつ。
地球人はなんて恐ろしい武器を思いつくのか。
「はっはっはぁー、奥さん何か勘違いしてますけどな、アレは本来こっちが目的なんやで。」
声を掛けて来たのはトッコーギケンなるとこの所長さんだった女性だ。
男っぽい恰好をして、沢山の男たちを使いこなす小さな女性。
彼女が「ジュウキ」なる機械に乗ってウルトゥム達に現場を見せてくれているのである。
「まぁ、こっちの重機は兵器からの転用やけどな。」
このツィマットという女性は少し変わったイントネーションで話す方だ。
「とはいえ、地球人の科学が生み出す機械はすごいんや。兵器にもなるし生活を豊かにもする。使い方次第やけど、ウチはこいつが好きや。オトンもこれに魅せられて地球に来たんやからな。」
「そうですね。地球の科学はすごい。それが先の戦争で多くの国に知れ渡りました。だから多くの国が地球との国交を望んでいます。」
「そうや。みんな科学技術が欲しいんや。――だが、すぐには渡せん。これは大和の武器で地球の未来を拓くものや。時間をかけて地球を豊かにしてからやな。」
「……アナタは地球が好きなのですね。」
「あたりまえや。ウチは地球育ちの地球人やで。」
ツィマットはカカッと笑いながら当たり前の事として言ってみせる。
彼女の父親は異星人で、彼女はハーフであるのに。大和という国はそれを当たり前に言える国だった。
そこがすごいのである。
そこが好きなのである。
「大和はこの
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