第79話 ウルトゥムの1日。4
ワタシ、ウルトゥムはミツルの妻であると同時にメイドでもある。
夫のミツルは別にメイドを続けなくてもいいと言っていた。が、ミチルがメイド好きだってことは悪魔から聞いている。
ならば、雇いの使用人のメイドと身内のメイドでしっかり区別をつけておくべきだろう。
べつにミツルを独占したいわけでは無いし、側室だって許す。
しかし、やはり節度は大事だろう。
だからこその区別だ。
そして現在は松永家のメイド長はワタシである。
見習いとしてニャルが居る。
今はこの2人が身内のメイドになる。
ワタシはメイド長として今雇っているメイドたちの前に立っている。
メイド服はワタシ達と雇いのメイドでデザインを変えている。
立場が上の者としてワタシは胸を張って彼女たちを指導する。
とはいっても、今の使用人の仕事は主に街を開拓するために住み込んでいる開拓者たちのお世話である。
一部だけは屋敷の管理に回しているが、ほとんどが他所からの借りものなのである。
松永家はできたばかりの家、慣習も規律も今から創っていかなければならない。
今後、街が開拓されて住むところができて行けば住み込みの開拓者もそちらに移り住んでゆくことだろう。
そうなれば今のメイドを雇う意味は減る。
その中で、今後も松永家で雇っていくメイドを見繕っていかなければならないと考えている。
ミツルの大和帝国皇帝から期待されてる働きを考えれば、優れた使用人を集めておかなければならないだろう。
「奥様。屋敷の掃除が終わりました。」
そこで1人の使用人が声を掛けて来た。
イブ・ステイン。
ワタシのお気に入りのメイドである。
与えた仕事は丁寧で速い。また、ワタシに対しても気兼ねなく話しかけてくることもいいところだ。
「そうね、では空いた時間は屋敷を飾る装飾なんかを作ってくれるかしら。」
「かしこまりました。」
イブは今では屋敷働きのメイドたちのまとめ役にもなっており、こうして私の指示を仰ぎ皆につたえることをする。
彼女は長い金髪を結い上げた青い瞳の少女である。
大和の人達より肌が白く、体の線も細い。
日本語も時々片言になる時がある。
大和の民とは毛色が異なるが、大和の前の日本と違う国の生まれだそうだ。
終戦に際して、大和が他国に頼んだ地球人の生き残りを集める際に大和にやって来たところ、勤め先として内を紹介され多と聞いている。
ワタシは彼女のことをいたく尊敬している。
大和では毛色の違いでの迫害は少ない様だが、それでも生きづらいだろう。
彼女がワタシの報告役になっちるのも他のメイドから押し付けられてのことだとも知っている。
それでも彼女は気丈だった。
うつむくことなく胸を張って生きている。ワタシはそれを見るのが好きだった。
ワタシと似た境遇。
応援したい気持ちもあるが、彼女は間違いなく強い。肉体ではなく心が。
だからこそワタシは彼女を松永の家に正式に雇い入れることを決めいた。
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