第49話 最所はここ。
ウルトゥムとのデート(新婚旅行)の最初の目的地はここにしたわけだが、
「どうだ。何か感じるものはあるか。」
「感じるものですか。そういわれても―――ここって皇居の中ですよね。」
あぁそう思われても仕方無いですよね。
なんてったってここは内裏府の敷地内ですから。
それでもここは大和文化を紹介する中では重要な場所だと思う。
「ここは南都六宗のひとつである法相宗の本山とされる薬師寺だよ。」
俺はまず初めに大和奈良の見どころのひとつである薬師寺にウルトゥムを連れて来た。
場所は平城旧跡の南にあり、転生前なら近鉄の橿原線の西ノ京町の傍にあるお寺である。
「それは大和帝国の国教ですか。」
「いや、大和帝国の国教はしいて言うなら神道かな。」
「それはつまり、神道の法相宗の教会がここだということですか。」
「違うよ。」
俺はできるだけ優しく笑顔で答えたつもりだったのだが、ウルトゥムが若干引いていた。
「え…えっと、……え?え、じゃぁ何で皇居にあるんですか?」
そう言われると説明しづらいが、
「大和帝国の元になった日本には複数の宗教が存在したんだ。」
「――――は?」
すっげーありえないって顔でした。
でしょうね。
日本文化を欠片も理解できない文化からしたら宗教が複数成り立つ国は理解しがたいでしょうね。
ウルトゥムがすっげー眉をしかめながら俺を見てくるのだが、とりあえず説明よりみてもらうことにした。
百聞は一見に如かず、である。
「ふ~~~~~~~おぉぉぉぉぉぉぉ。」
予想に反してウルトゥムは早くも目を輝かせていた。
「なんだあの塔は、ハイパーボリアに数ある塔とは全く趣の異なる建築様式ではないか。」
「これが大和の文化だよ…。」
目をキラキラしながら薬師寺の東塔を見上げるウルトゥムはそれは楽しそうにしていた。
「大和にはこれのほかにも塔をつくって来たんだが、…君のおめがねにかなって嬉しいよ。」
「不思議なものだな……、ボリア帝国は石と粘土、鉄と血の文化だったのに―――、なぜこのように懐かしさと安らぎを感じられるのだろうか。」
「…………………………。」
ここで気の利いたことが言えたらいい男なのだろうが、あいにく俺にはそんな甲斐性は無かった。
そっと。
「―――っ!」
塔を見上げていたウルトゥムの手を握るぐらいしかできなかった。
正直ウルトゥムの顔を見れなかったのだが、ギュっと手を握り返された。
――――――
真剣で自分がどんな顔をしていたか分からなかったが、ウルトゥムが笑顔だっただろうことは顔を見なくても分かった。
――――――
ちなみに、
「なんですか、あの四天王というものは。格好良すぎますよ。
くぅぅ~~~~、これは是非にも私たちの領地にも作るべきですよ。」
と、薬師寺が誇る四天王像を見たウルトゥムが興奮のあまりつないだ手をぶんぶん振り回していたりした。」
うん。
デートの一発目にそこまでテンション上げてくれるのは大変喜ばしいものであるであるが、――――四天王は勘弁してください。
個人的には手塚治虫御大の火の鳥までしか許せない、っというか、負けフラグにしか思えないんです。
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