第17話 いざ行かん、仕事は帝都にあり。
「帝都に生きたくないなぁ。」
「旦那、この期に及んで何言ってんですか☆。」
まぁウィズの言うことも解るが、けどいろんな意味で厄介ごとになりそうで仕方ない。
「ハイハイ♡、諦めて行きましょう☠」
そう言われて操縦席に突っ込まれたのであきらめる。
コックピットは完全密室型、本来は座席は一つだが改修されてメインシートの裏に少し高い位置にもう一つ座席がある。
ウィズは俺の影に、ウルトゥムは俺の後ろの座席に収まった。
俺はメインシートに座り、ヘッドギアとグローブを付ける。
機体のシステムとのリンクを確認。
主動力の点火を行えばコックピット内に明かりがともる。
目の前のメインモニターに起動シークエンスの情報が映され問題なくシステムが起動したことが表示された。
「ウルトゥム、そっちは問題ないか。」
「大丈夫です。システムとのリンクはオールグリーンです。」
その答えを聞いて俺はもう一つのシステムを起動した。
もともとこの機体は1人乗り用でシステムもそれがメインだ。
メインシートに付いたものが操縦するようにできている。
そしてサブシートに用意されている機能は主に索敵管制と火器管制、つまり情報処理が求められている。
―――というのが本来の開発コンセプトだったのだが、それを特甲技研の所長が勝手に色々していたために別物になっている。
答から言うと『合体』である。
搭乗者と機体がリンクするマンマシーンインターフェースシステムの都合上、複数人の搭乗者はバグのもとになるモノだとされていた。
それでも情報処理の面で複座式の利点がある事から開発が始まった機体だったのだが、ついでに合体システムの開発に必要なデータも取ろうとしてやがったのだ。
その為、この機体には機械を通して搭乗者の意識をリンクするためのシステムも搭載されているのだ。
行きでは使わなかったシステムだが一応使っておかなければツィマット所長にどやされる。
通常のシステムでは自分の考えがダイレクトに機体に反映されるものだった。
つまり、あくまで出力だけの状態だったのだが。
この新しいシステムを起動したとたん、何かが自分の中に入ってくる感じがする。
感じられるのは機体の状態、動力の出力やマニピュレーターのステータスなどだ。
それだけじゃない。
まるで自分の形が別のものに変わったかのように感じる。
バイク形態だからだろうか、タイヤやサスが自分の体の一部、いや新しい自分の一部に感じられる。
他にも内臓火器や人型になる機構、そして数多の触手。
「ん?触手。」
「おあ”あ”あ”あ”あ”~、ごしゅじんざまぁ”ぁ”。ご、ごれ“駄目ででずうう。」
後ろの席を見るとウルトゥムが人の形を崩して触手をおっぴろげていた。
「お!お”お”お”あ”あ”あ”~、ごREぎぼじわるい”~、いや”む”じろきも”じいい”ぃぃ?わだ、わだしのながにごしゅじんざま”をかんじる”るるるるる。」
コックピットの中を触手が埋め尽くして危うく圧殺されかけたので急いでシステムを切る。
ウルトゥムが人の形に戻るまでしばしの時間がかかった。
知ってるか、触手の中って暖かいんだぜ。
とりあえずウルトゥムが人の姿に戻ってから、今度は新システムを使わずに機体を立ち上げる。
「じゃぁ、留守番は頼んだぞ。」
俺は留守番のヴォルテールに声をかけてから、
「お任せください。」
「それじゃぁ帝都に出発進行☆~。」
ウィズの掛け声で機体のアクセルを吹かして発進した。
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