転校してきた女子高生はメチャメチャ美少女で、しかも完ペキに哲学者だった

廣木烏里

転校生が美少女すぎた


 僕の名前は綾戸あやとリク。片田舎に暮らす高校二年生で、男女共学の普通校に通っている平凡な16歳。


 自分で言うのもなんだけど、顔とスタイルはそんなに悪くない。でも、学校で目立つことも好きじゃないし、告白されたこともない。


 「マイペースに生きる」がモットーだ。

 

 帰宅部は一番いい。暑苦しい先生に怒鳴られることも、放課後の自由な時間を奪われることも、無理に走り回る必要もないから。ただ、モテないのがちょっと切ないけど。

 

 でもとにかく、「面倒くさい」ことはごめんだ。ただでさえ、人生は面倒だし。

 朝早く起きるのも。学校へ通うのも。つまらない授業を受けるのも。毎日ご飯を食べるのも。明日起きるために眠るのも……本当に嫌になる。


 「起立〜! 気をつけ、礼! おはようございま〜す」

 「はい、おはよう」


 担任の田中先生タナセンの横には、見慣れない制服の美少女が立っていた——。





 ライトブルーの制服に、黒髪のロングストレート。身長は低め。超美少女。細めのメガネをかけている。クールそう……。いや、可愛いすぎる!


 「はじめまして。星奈ほしなヒマリです。東京から来ました」


 うつむいた感じで話す仕草に見惚れていた。

 東京かぁ。どうりで可愛い制服だよなぁ。てか、顔が可愛すぎるって!!



 「じゃあ、星奈はリクの隣の席に座ってくれ」


 え! 僕の隣? やばいやばいやばい!!

 

 彼女はスッと席についた。まるで猫のように美しい身のこなしで。


 「今日からよろしくお願いします」

 「うっ……、うん。よろしく」


 やばいやばいやばい!! 顔見れない。

 何で僕の隣の席なんかに!


 タナセンが言った。


 「星奈。わからないこととかあったら、リクに聞いてくれ。リク、頼むぞ」


 なんて勝手なことを言うんだ……。

 あ〜、これは面倒なことになったぞ。どうせ僕なんて見向きもされないのに、隣にいられると意識してしまう……


 いや、僕がやるべきことは、とにかく彼女を意識しないことだ。モットーは「マイペースに生きる」。どんなに彼女が可愛くたって、自分のペースを乱されてはいけない。そのうち彼女も友達ができて、すぐに彼氏もできるのだから。


 そう自分に言い聞かせることに精一杯で、この日一日、僕は授業という授業がまったく耳に入ってこなかった——





 放課後。


 教室を出ると、ようやく気持ちが落ち着いた。

 そうだ、こんなことに惑わされてはいけない。いつものペースを取り戻さなくては。


 僕は、いつものルートで裏門へ向かった。

 正門へ向かう正統なルートは歩かないことにしている。人も多いし、女子たちがサッカー部を見て「キャッキャッ」言っているのも好きじゃない。とにかくのんびり帰りたい。

 だからいつも靴を履き替えると、裏側の細道から帰る。その道で、たまにニャン吉に会えるのが楽しみでもある。今日はいるかな〜、アイツ。


 「あっ!!」


 しまった! つい大きな声を出してしまった!

 だって、ライトブルーの制服を着た星奈が、ニャン吉と一緒に座っていたから……。

 

 「ひゃっ!!」


 星奈は僕の声に驚いてしまって、肩をビクッとさせた。


 しゃがんだままの星奈は、ゆっくり僕の方を向いてこう言った。


 「リクくん、初めまして」

 「え?」


 この日僕は、星奈ヒマリの「2回目のはじめまして」を聞くことになった。


 彼女の美しい小さな体に“大きな秘密”があることは、このときはまだ知らなかったのだ——



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