第14話変わらない風景

「ハアハア。そろそろ暑くなってきたな」

「そうね」


 まいちゃんはにこやかに答える。

「うー、明日も筋肉痛痛そうだ」

 そういうとまいちゃんはクスクス笑った。


「私たち若いからまだ大丈夫よ」

「そうかな?」

 一拍をおいて俺は言った。


「それで、どうだった?俺の絵」

「うん。絵ってね」


「うん」

「普通に描くとあんなに美しく書けないっていうのがわかった」


「ああ、それな」

 俺はうなずいた。


「ほんとプロの人たちすげえよな。二次元で、あれだけ生き生きと絵に命を吹き込むなんて。やっぱり彼らは当然上手いんだけどさ、でも、あんなにリアルに書けるなんてほんとすげえよ」


「うん。私もそう思う。たかくんの絵を見るまでそんなこと露(つゆ)とも思ってなかったけど、やっぱりプロってすごいんだね」


「そうだよなぁ。だって絵で恋をしてしまう人が大勢いるわけだろ?やっぱり、本物の絵描きはすげえよ」

「うん」


「俺もどこまでできるかわからないけど、できるだけ近づけるようにするよ」

 そう、俺は行った。俺が初めて書いた拙い(つたない)絵を見ながら。


「うん」


 俺はスマホを取り出す。

「もう、11時だ。帰るか」

「そうね」

 それで俺らは坂を下っていく。坂を下り終え、俺らの家が見えた頃。


「あら?」

「おお」

 一人の少年と少女が田んぼの畦道(あぜみち)をかけっこしていた。少年の方は虫取り網を持っている。


「今も自然と戯れている(たわむれている)少年がいるんだな」

「そうね。そして、それを追いかける女の子も」


 二人して彼らを見つめる。二人の幼児はキャッキャと楽しそうに遊んでいる。

俺はまいちゃんの袖をちょっと引っ張る。


「いくか」

「うん」

 そのまま、帰路についた。



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