転生世界で、こたつを作ってみた。
落葉沙夢
プロローグ
やあ、僕の名前はファム。
表紙に書いてるから知ってるね。
そして、もう一つ表紙に書かれている言葉がある。
題名だ。
この本を手に取った人の多くが真っ先に抱く疑問があると思う。
「こたつってなんだ?」
そう、この世界に〝こたつ〟はない。
こたつってのは僕の転生元世界「地球」にある暖房器具の一種だ。
地球はそれなりに科学の発達した世界。
全ての住人が、あらゆる世界からの転生者であるこの世界で、地球にあるようなモノの大半は当たり前にこの世界にある。
だけど、なぜかこたつはこの世界にないんだ。
少し、昔話をしようと思う。
あれは、僕が十二歳の頃、季節は冬。
転生夢から目覚めた朝だった(ちなみに、僕の転生前は特に語ることもない平凡な人間だった。それを全く残念に思わなかったと言えば嘘になるけど……まぁその話はあんまり重要じゃない)。
転生前の記憶の全てを思い出した朝、僕は布団から出たくなかった(別にこの朝だけじゃなくて、冬はいつもそうなんだけど)。
それでも、意を決して布団から出て、僕は暖かさを求めて居間に向かった。
魔力式ストーブの暖かさに包まれた居間。両親は既に起きていて、椅子に座って、膝掛けをして、僕に「おはよう」を言う。
いつも通りの冬の朝だ。
でも、なにかが足りなかった。
昨日までは全く思わなかった、なにか物足りない感覚。
転生前の記憶と昨日までの記憶が、お互いの「当たり前」を譲らないせいで起こる変な混乱。
きっと、誰もが一度は経験した感覚だと思う(学術的には「ファエレスの気付き」って言うらしい)。
それが、僕にとっては「こたつ」だったんだ。
どうして、居間にこたつがないんだろう?
冬なのに?
あの暖かさはどこだろう?
って、そんな疑問が消えなかった。
そして、気付いた。「この世界にはこたつがない!」ってね。
僕にとって、これはかなり衝撃的な事だったんだ。
こたつがないってことは、この世界の住人は冬のこたつの魅力を知らないって事だ。
なんて勿体ないんだろう!?
それが、僕がこたつを作ろうと思った理由……って言うと少し理論が跳躍しちゃってるけど、まぁ概ね、そんな感じ。
だから、僕はこたつを作ったんだ。
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