恋の急展開②


「もしかして私?」


「鈍感すぎるだろ…」


ため息をつかれると肩を掴まれて

大地の方を向かされる。


「あのさ、もう伝わってると思うけど…

俺は、お前、


福原美葉菜のことが好きです。


福原は桜沢のことが好きなの知ってるけど、諦めきれない。


俺と付き合ってください。」


大地の普段からは考えられない真剣な声。


私の唇に大地の顔が近づいてきて

一瞬だけ触れ合う。


漫画やドラマであんなに憧れていた


ファーストキスなのに


不思議と私は冷静だった。


「福原の唇って甘いのな。

なんかリップつけてる?」


大地が微笑みながら言う発言に、

遅ればせながら頬が熱を持ってくる。


「付けてない。今日試合だったし」


「ふーん。すげー可愛い。」


「あの…

一応ファーストキスなんだけど…」


「マジ?ラッキーっ。てかこんなに可愛いのに

…よく狙われなかったな… 」


最後の方はよく聞き取れなかった。


「なんか言った?」


その時、顧問の先生が入ってきて

慌てて目線を外す。


簡易的に診てもらっていると、


やがて車の音がして

おばさんと桜沢くんが降りてきた。




side凛斗


少し早めの昼食を食べてる時だった。


家の固定電話が鳴り、

電話を取った母さんが神妙な顔で


「はい家でお預かりしてるお嬢さんです。」


福原のこととすぐ分かった。


隣でチャーハンをかきこんでいる蓮斗が

ビクッと反応する。


あからさますぎるだろ…


「はい、すぐ行きます」


受話器を置いた母さん。


「みっちゃん怪我したって、どうしよう…

酷いかもしれないって。

家で責任もってお預かりしているのに…

福原さんに申し訳ないわ。」


「みっちゃんどうなるの?」

蓮斗は既に椅子から立ち上がりかけている。


「今から迎えに行く。

保険証どこだったかしら?

あ、凛斗、ついてきて」


母の運転で高校に向かう。


車を停めると


「すいません!」


顧問の先生と保険医が出てきた。


「みっちゃんはどうですか?」


間髪入れず母が聞く。


「折れては無いですけど…

だいぶ腫れ上がっているので…」


母たちが話していると福原が出てきた。


校庭にいた時の友達に

抱きかかえられている。


確か、神田大地っていって男バスのエース。


ていうかそれ、


お姫様だっこ


じゃん。


なんかイラってきて、


モヤモヤっとして、


ただ見ていると、

神田の腕の中で福原が暴れだした。


「ちょっと大地降ろしてよー。」


「立つのもやっとのくせに

何言ってるんだよ。」


神田が俺を睨むように見る。

何だし。


「帰るぞ、ほら。」


福原に手を伸ばすと

神田が一瞬手を引っ込める。


すぐ戻すが不服そうな顔で

俺を睨みつけ続けている。


イラッとしていた俺は睨み返す。


しばらくすると神田が

福原の頭に手をポンとのせて

「また LINE で連絡するから」

と行ってしまった。


神田が学校へ入って行った途端、

福原の体から力が抜けるのが分かった。


「大丈夫か?」

俺が尋ねると小さく頷く。


そこへ


「みっちゃん、平気?」


先生と話終わった母が駆け寄ってきた。


「ほら、凛斗ぼーっとしないで

みっちゃんを車に」


母に急かされるまま車に乗り込み

病院に向かう。


車の中で脚を見てみると

真っ赤に腫れている。


福原自身もこんな状態になってるとは

思わなかったらしく、

しばらく絶句していた。


そして涙をこらえるように

ぎゅっと目をつぶる。


無理もないだろう。


バスケ部みたいなたくさん走る

部活の選手にとって足の怪我は致命的だ。


しかも御星は強豪なので

一度立ち止まってしまうと

追いつくのは大変だ。


言葉を掛けることができずに

病院までの道のりの間、

ずっと福原の背中を

慰めるようにさすっていた。

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