4 ガキンチョ!vsお浜ばあさん!

 


 今回は、【ひなっち!!!】さんからご提供いただいたエピソードをベースに脚色しています。


 ひなっち!!!さん、ありがとう♪


 相手がガキだろうと、意思を持ってした事には違いない。理不尽りふじんな事を許せないのがお浜ばあさん。






 風はまだまだ冷たいが、太陽が燦々さんさんと輝き、日向ひなたはポカポカ陽気。


 お浜さんも妖気。……もとい、容器。またまたもとい、陽気。


 いつものホームに立っていると、高校生らしき少女が隣に来た。


 お浜さんが少女の顔をのぞき込み、いつもの愛嬌でニッとすると、少女は恥ずかしそうにうつむいた。


「クッ。可愛いのう」


 と、その時。


 少女の後ろにいた小学2~3年のガキンチョがいきなり少女に跳び蹴りした。


「痛っ!」


 少女は痛そうに足を擦りながら、ガキンチョに振り向いた。


「こらっ!ガキっ!」


 お浜さんはガキンチョの後ろえりつかむと、引っ張った。


「イテっ!何すんだよ、ババア」


「ババアだと?このクソガキがっ!今、何やったんだ?」


「何がだよ?なんもやってねえよ」


「ちゃんと見てたんだよ、この目で。この子の足を蹴っ飛ばしたろ?」


「だったら、なんだよ?」


「だったら、なんだよじゃねえよ。なんで蹴ったんだ?」


「サッカーの練習やってたら、たまたま当たったんだろ?」


「だったら、この人に謝りなよ」


「なんでだよ?前にいんのが悪いんだろ?」


「どうしようもねえガキだな。傷害罪で訴えてやるから、駅員室に来い」


 お浜さんはそう言いながら、ガキンチョの後ろ襟を引っ張った。


「ヤだよっ!やめろよっ!」


「あら、嫌だ。子供相手に何やってんのかしら、大人げない」


 集まって来た野次馬やじうまの一人、中年女がまゆをひそめた。


「そこの厚化粧のオバサン、事情も知らねえで、余計な口挟むんじゃないよ」


 お浜さんが一喝した。


「ま、失礼な!厚化粧のオバサンですって」


「さあ、どうすんだ?警察に行って、親に来てもらう?それとも、この人に謝るか?どっちにするんだい?」


「謝るから、離せよ!」


「謝ってから離してやるよ」


「……ごめんなさい」


 ガキンチョは、小声で謝った。


「もっと大きな声で、もっと頭を下げて」


「ごめんなさいっ!」


 ガキンチョは大きな声で謝って、頭を下げた。


「大丈夫……気にしないで」


 少女はそう言って恥ずかしそうに俯いた。


「もう二度とこんな真似をするなよ。分かった?」


「……わかったよ」


「じゃ、これで解放してやるよ」


 お浜さんが手を離した途端、


「覚えとけよ、クソババア!」


 ガキンチョは生意気な口をくと、走って逃げた。


「覚えとくよ、クソガキ!」


「ありがとうございました」


 少女が深々とお辞儀じぎをした。


「それより、ケガはなかった?」


「はい。もう痛くないです」


 少女がはにかむように笑った。


「そりゃあ良かった」


 お浜さんも、ニッと笑った。


 タイミング良く来た電車に乗ると、お浜さんは優先席に座り、少女は斜前のロングシートに座った。


「さて、ティータイムと参りますかね?……ん~、一日一善。良い事をすると、カフェオレが旨いね~。ゲヘッ」

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