退屈おばばの、刺激求めて山手線!
紫 李鳥
1 人前でチュッチュチューは控えめに!
お浜さんは、小柄な上に腰が曲がっているせいか、とってもチッちゃく見える。
曲がった背中には、ピンクの可愛いリュック。帽子も夏は
「さてさて、140円の旅と参りますかのぅ。ホットカフェオレのペットボトルもリュックに入れたし、
お浜さんは、タンスの上に置いた亡き夫の写真に手を合わせると、
「じゃ、あんた、行って来ますよ。天国から見守ってちょー」
と、頭を下げた。
お浜さんの最寄り駅は
お浜さんは、山手線がお気に入り。初乗り運賃で一日中遊べる。午後の山手線は乗客も少なく、暇潰しには打って付けだ。
ま、お浜さんの様子を見れば納得する。では、お浜さんの、
「あ~、やっぱ、電車ん中は暖ったかくてイ~ね。外の気温と20度は違う。ハワイに来たようなもんだ。ゲヘッ。さて、カフェオレで、午後のティータイムと
さりげなくダジャレを言いながら、お浜さんはリュックからペットボトルを出すと、ラッパ飲みした。
「ふぅ~、オイチイ。〈ほッカイロ〉で包んできたから、まだまだ温ったかいやね。〈ほッカイロ〉は便利だね。モミモミすれば、何度でも使える。経済的だわさ」
お浜さんは誰に話すでもなく、独り言のように
ま、良く言えば、
山手線は、客の乗り降りが激しい。アッと言う間に客層が変わる。素知らぬ顔をしていた乗客も、その
向かいの席が空いたかと思いきや、入れ替わりにアベックが座り、早速、キスをし始めた。
「ったく、真っ昼間からチュッチュチューかい?男は22、3歳。女はちょい上の24、5か?アメリカナイズされちまって、それはナイズよ。しかも優先席を二人占めだ。あらら、ご覧な。松葉杖の兄さんが、恨めしそうにチラ見だ。チッ!まだチュッチュチューしてるよ。周りが見えてねぇし、なんも聞こえてねぇみたいだな」
お浜さんはそうペラペラ喋り、すたすたとアベックの前に行くと、
「ヒ~クッション!この物語はフィクションです!」
デッかいくしゃみと共に一言添えた。キョトンとしたアベックは我に返るとすくと立ち上がり、慌てて隣の車両に移った。
お浜さんは、松葉杖のマッチョにニッとすると、優先席に目配せした。マッチョは恥ずかしそうにチョコンと頭を下げると、お浜さんの前に座った。
「あ~、
お浜さんはペットボトルをラッパ飲みすると、そう言ってニッと笑った。
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