陸軍との争い 二

 模擬戦の準備をあれこれとしている間に一週間が経とうとしていた、しかし、現代兵器ならではの問題点がたくさん見つかった、中でも深刻なのは電子機器関連だった、本来現代航空機はGPSなどをはじめとする位置情報システムなどを多用しており、それらがない状況だと、空母のレーダー網の範囲内でないと誘導できないという問題だ、ただ空母のレーダー網の距離の問題は大したことはない、なぜならこれの探索距離は最大で五百キロメートル近い、ならば何が問題化というと、航空機の正確な位置情報が分からないため正確な対地攻撃などは行えないことだ、将来陸軍との共同作戦をするときには致命的な欠陥になる、しかしそれらよりもよっぽど大きな問題がある、それはロナルド・レーガン自体の大きさだ、このクラスの艦艇が入渠できるドックは少なくとも今の日本には存在しない、急遽建造中ではあるが、それも完成するまでに二年近い時間がかかる、それまでは作戦で中波するだけでも修理できなくなるということになる、そのような状況ではまず先陣を切るのはリスクが高い、これを解決するには陸軍を認めさせることだ、そうすれば陸軍の施設課の支援が受けられ、ドック建造がそれだけ早まる、ゆえにこれからの陸軍との模擬戦であった。

陸軍との模擬戦のルールは、陸軍の爆雷が空母への攻撃態勢に入れば我々の負けである、そして我々が発艦可能なのは陸軍の攻撃中五分前だ、なかなかにかつかつである、そうこう考えているとついにスーパーホーネットの発艦が開始された

「敵機本艦九時方向、距離七十キロ、速度百七十ノット、高度五千です、本艦到達までの残り時間十五分です」

 一気に作戦指揮所に緊張が走る、なお今回の模擬戦には五十六をはじめとする連合艦隊の参謀官たちも見学に来ている、

「待機中のスーパーホーネットにスクランブル発動、離陸可能機から直ちに離陸せよ」

こうしてスクランブル司令を出すと一気に外からジェット音が聞こえてくる、大気中のスーパーホーネットが一斉に動き出したのだ、今回発艦する戦闘機は五機となっている、スクランブルを発動して全力で離陸させると五分で離陸完了するだろう、すぐさま作戦を立案していく、

「発艦後は編隊飛行させますか?」

 そう聞いてきたのは航空長の石野だった、

「単機での接敵と編隊での接敵の推定時間は」

「単機であれば五十キロ先にて五分後に、編隊を組んだ後となると所要時間を五分として三十キロ先にて十分ほどです」

 これであれば単機でも先に接敵させよう、流石に接敵後五分で片が付くとは思えない、こちらは攻撃態勢に入られたらその時点で敗北だ、虎の子であるファランクスこそ最後の砦としては存在するが、それでも数によっては迎撃しきれない可能性がある

「離陸後編隊を組まずにすぐさま迎撃に迎え、しかしパイロットには無理をするなと伝えろ、遊撃で構わん」

 そうだ遊撃して時間を稼ぐだけで増援を出すことができるのだそこまで指示を出すのに三十秒ほどしかかかっていない、そうこうしているとすでに最初の二機の発艦準備が完了し、カタパルトで発艦していった

「ギーパー、アルファワン、フライヘディングトゥーセブンゼロ、クライムメインテインファイブサウザンド」

 離陸していった二機のうち編隊長機であるアルファワンから無線が入る、これは方位二百七十度へ向けて飛行し、五千メートルまで上昇するという内容だった、

「すぐさまもう二機を離陸させろ、それとファランクス起動、対空迎撃態勢に入れ、戦闘期待には数機ぐらいならこちらでも対処できると伝えろ、とにかく数を落とすことを考えるんだ」

 ちなみにファランクスにも模擬段が装てんしてある、敵機に被弾させても墜落はしないはずだ、そうして全機が発艦し終わるころにはアルファワンがちょうど接敵していた

「アルファワン、ギーバー、レーダーコンタクト、レディートゥーインターセプト」

 これよりアルファワンは迎撃に入る、余談だがスーパーホーネットはm61aバルカン砲を搭載しており、毎分六千発で射撃できる、欠点としては現代戦ではまずありえない格闘装備のため、段数が四百発程度しかないことか、実際に四秒掃射すると球が切れてしまう


 そのころアルファワンは常識外ともいえる、相手より高度を下げ、持ち前のエンジンパワーで相手の死角からの攻撃を行っていた、しかしゼロ戦パイロットも黙って食らうわけではなく二度目からは下からの攻撃にも警戒していた、しかしいくら警戒しても死角からの攻撃はそう簡単によけれるものではない、そうして敵の護衛であるゼロ戦の攻撃網を抜け、ついに爆雷の模擬段を積んだ一攻にまで手を出していた、そうして後発組の支援が到着留守るころにはすでにほとんどの航空機が被弾し、離脱した後だった、もはやファランクスが一度も砲撃することのない完全勝利、これは陸軍の面子を完全につぶすとともに、この世界にて空母艦隊が暴れまわる始まりとなった

「いやあ、流石というかなんというか、ここまで強力だとは思ってなかったよ」

 そう言ってきたのは五十六だった、彼らは色々聞きたいことがあったようだが模擬戦とは言え戦闘中だったので、最後まで無言で傍観していた

「いえいえ、これでも私の指揮はつたないものだと思いますよ、元々私はこれまで一度も空母の戦闘指揮なんて訓練したことありませんでしたから」

 まあそうだ、そもそも日本に空母など存在しないのだから、元海上自衛官である俺が戦闘指揮を執ったわけがないのである

「そうなのかね、そもそも我々の知っている空母とはとは違いすぎるためよくわからないのだが、それはそうと、先ほど言っていたファランクスとは何だね、昔使われていた槍の陣形だと思うが」

 そういえばファランクスなどの対空砲についてはほとんど何も説明していなかった、まあこれを機にほかの装備も説明しよう

「ファランクスとは対空砲の名前です、これは索敵から射撃、敵の殲滅判定までを全自動で行うシステムですよ、ちなみに二十ミリバルカン砲で毎分六千発の射撃が可能です、それと我が空母が使用している戦闘機はFA18という通称スーパーホーネットです、これも同じバルカン砲を搭載しており、最高速度はおよそ千二百ノット程度です」

 そして細かい説明を終え、横須賀へと帰港した。

「今日もまた面白いものを見せてもらえた、もしよければこの空母ロナルド・レーガンを連合艦隊旗艦にしたい、もちろん艦隊作戦中の指揮権は君に一任する、どうだろう引き受けてもらえないかね」

 まあはっきり言って予想外だった、本来の計画では千九百四十一年に大和が旗艦になるはずだ、よっぽど軍上層部に気に入られたのだろう

「まあ作戦行動中の指揮権を我々が持てるのであればよろしいですよ」

 まあそこまでの実害はない、むしろここで拒否した場合、後から仲が悪くなる方が面倒だった、ゆえに承諾し、諸々の手続きがあるため、千九百四十一年の一月一日付でロナルド・レーガンが連合艦隊旗艦となった

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