髪はいらない

 学校の、三階のトイレ、用を足して、出てくる木之瀬蘭子。

すると奥の個室から、壁を叩く音。

 

 蘭子は、個室の前に立ち


「どうしました?」


と声を掛ける


 すると弱弱しい少女の声が帰ってくる。


「かみください……」

「いいですわ」


そう言うと、蘭子は、近くにあった予備のトイレットペーパーを手に取り、

個室に投げ入れた。だが


「かみください……」

「まだ足りないのですか?」


 蘭子は、再びトイレットペーパーを手に取り、個室に投げ入れた。


「かみください……」


また投げ入れた。


「かみください……」


との声、しかし


「もうありませんわ」


 もう予備のトイレットペーパーはない。しかし彼女の呼びかけに対し返答はない。

気になった蘭子はノックをした。やはり返答はなし


「……」


 何を思ったか、彼女は扉を開けた。鍵はかかってなくて


「あらあら」


そこには、誰もいなかった。しかし声が聞こえてきた。

さっきの少女の声、

だが凄みがある


「欲しいのは、アンタのよ!」


便器から、手が伸びてくると、蘭子の髪をつかんだ。次の瞬間


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


手が血まみれになって、のた打ち回っていた。


「どうです、わたくしの髪は、お気に召して?」


 手が髪をつかむ寸前に、彼女は自分の髪を硬く、針の様に鋭いものに変えていた。

それを掴んだものだから、手に刺さり、血まみれ。


「こんな髪で、良ければ、いくらでもくれてあげますわ」


 蘭子の針の様になった髪が、動き出し、手に襲い掛かって、串刺しにした。

手から血が吹き出し、個室を、便器を真っ赤に染めた。


「ぎゃあ!もうやめて!もういらない!髪なんていらない!」


蘭子の髪に襲われ、血まみれズタズタになった手は、便器に引っ込んでいった。


「さてと……」


蘭子は、髪を元に戻しつつ、掃除用具を取ってきて、個室の掃除をした後、

その場から去っていった。




 奥から三番目の個室から声


「蘭子ちゃん……恐ろしい……」

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