考世界学者ローレンによる手記

雪田冬 (Euchaeta)

収集番号 001

 爆発は大きかった。

 今はもう煙も見えないが、かの地はおそらくは一面の砂漠と化したものと推測される。この世界にも火があるとは思ってもみなかった。

 商業都市バリエルクへの乗合鳥車に無事潜り込んだはいいが、周囲のアプレキオストル濃度の高さにげんなりする。ベルフソン博士のコレイトンスト・アレルギーはここでなら快方へと向かうかもしれない。彼女をここに連れてくる方法がもはや存在しないのは残念だ。

 私の送信したいくつかのデータは既に到着しているものと考えてよいだろう。自分自身はともかく、さまざまな事物を揚宣するのは結構大変なのだ。故に私は私がシェッミーゼルの最後のひときれを食べきってしまうことを許そうと思う。

 脳の働きに甘いものは大切なのだ。たとえどんな世界にいようとも。


 アザルカ附スリ地方、賛ミドの地にて

 Lauren

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る