人造人間楠木美晴

リョウ

人造人間楠木美晴

 人造人間を名乗る娘が家にやってきた。年齢は八歳かそこらだろうか。

「人造人間の楠木美晴と申します」彼女はそう名乗った。「今日からお世話になります」

「どうも」僕は不審な荷物が届いた時よりも驚きつつ、彼女を迎え入れた。

 それから僕は人造人間と同居を始めた。もう二週間になる。

「買い物に行ってきます」美晴は言った。

「僕も一緒に行くよ」

 二人で出かけた。美晴は人造人間だと言うが、僕には普通の人間にしか見えない。それに人造人間的な特徴が彼女には見当たらない。僕は普通の女の娘と暮らしているつもりだ。彼女の料理は美味いし、家事もこなせる。とても八歳かそこらの女の娘とは思えない。性格は冷静、というか感情がほとんど表に出ない。そこが人造人間らしいところなのだろうか。しかし高いところに手が届かず、策を練らず背伸びばかりする様は、人造人間らしくないと見える。

「ねえ美晴」僕は尋ねた。「君の人造人間らしいところってどこなの? 機械ではないんでしょ?」

「そうですね」美晴は考え込んだ。「強いて言えば、私の出生に、人造人間らしさがあります」

「出生?」

「はい。私を製造された博士は言いました。――お前は精子と卵子と言う、二つで一つのコアユニットから体組織が構築され、人間の体内と言う、有機カプセルで培養された。――と。私には三週間よりも前の記憶がありません。だから博士のその説明こそ、私の――人造人間としての証なのです」

「……それで、どうして僕のところに?」

「博士によると私の役割は、あなたの妹として生活を送ることだそうです」

「……そうなんだ。そうだ美晴、今度父さんに会いに行こうよ」

「あなたのお父様?」

「そう。もう何年も会ってないんだけど、前に一度だけ手紙が来てね。知らない女性と勝手に結婚したらしいんだ。何でも子供もできたとか。で、そろそろ挨拶に行こうかなと思ってたんだよ」

「わかりました。私も会ってみたいです」

「僕は殴ってやりたいよ」

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人造人間楠木美晴 リョウ @koyo-te

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