箸休め 虫が一寸とは限らない! ③コノハムシのオスは葉っぱに似てない!?

※文末に今回の「まとめ」を掲載しています。

 お時間のない方は、一番下まで画面をスクロールさせて下さい。


 巨大な昆虫に焦点を当てている今回のシリーズ。

 第1回は世界一長い昆虫を、第2回は世界一重い昆虫を紹介しました。


 ◇世界一重い昆虫もナナフシ?


 前回も言った通り、世界一重い昆虫にはいくつか候補があります。


 その内の一つが、東南アジアに棲むサカダチコノハナナフシです。


 彼女たちは体長16㌢にもなる昆虫で、体重は50㌘に達します。


 ただし大きいのはメスだけで、オスはメスの半分くらいしかありません。

 体格も華奢きゃしゃで、メスと並ぶと親子のようです。

 またメスは鮮やかな緑色ですが、オスは地味な茶色をしています。


 ◇コノハムシはナナフシの仲間


 実を言うと、彼等は「ナナフシ」ではなく、コノハムシの昆虫です。


 ただ第1回で紹介したように、コノハムシはナナフシもくぞくするグループです。

 コノハムシの仲間をナナフシと呼んでも、間違いとは言えません。


 ◇葉っぱに似ているのはメスだけ?


 コノハムシは20種程度の小さなグループですが、知名度は高い部類に入ります。

 葉っぱにそっくりな姿は、擬態ぎたいの代名詞と言っても過言ではないでしょう。


 しかし実のところ、オスはあまり葉っぱに似ていません。


 図鑑やテレビに出て来る「そっくりさん」は、全て「メス」です。

 その代わり、メスは飛べませんが、オスは飛ぶことが出来ます。


 ◇サカダチコノハナナフシのアレコレ


 ただサカダチコノハナナフシは例外で、メスも全く葉っぱに似ていません。


 と言うか、かなりゴツい体型で、身体やあしには鋭い棘が生えています。


 見た目は凶悪なのですが、エサは植物の葉っぱです。

 また普段は植物に擬態ぎたいしているため、ほとんど動きません。


 反面、こちらから手を出すと、ギチギチと音を立てて人間を威嚇します。

 更には「逆立ち」するように背中を反らし、うしあしで人間の手を挟みます。


 棘が鋭い分、痛みは相当なもので、出血することもあるようです。


 ◇世界一重いのはコガネムシ?


 サカダチコノハナナフシにははねがありますが、重すぎるせいで飛ぶことが出来ません。


 一方、同じく世界一重いと言われるゴライアスオオツノハナムグリは、飛ぶことが可能です。


 彼等はコウチュウもくコガネムシぞくする昆虫で、アフリカに棲息しています。

 体長は6㌢から11㌢程度で、100㌘まで成長すると言われています。


 胴体(胸部)の前方には白いしま模様があり、なかなか芸術的です。

 棲息地のアフリカを探したら、同じメイクをした部族が見付かるかも知れません。


 ◇「ゴライアス」は巨大な生物の代名詞


「ゴライアス」とは、旧約聖書きゅうやくせいしょに登場する巨人のことです。

 ダビデ像の「ダビデ」と戦った人物で、「ゴリアテ」と呼ばれることもあります。


 有名な巨人であるゴライアスは、大きな生き物の名前によく使われます。


 現に世界最大のカエルは、「ゴライアス」ガエルと名付けられています。

 世界最大のクモであるルブロンオオツチグモも、英名は「ゴライアス」バードイーターです。


 ◇コウチュウもくはとても多い!


 第1回目でも紹介しましたが、コウチュウもくは昆虫界最大のグループです。

 2020年現在までに、約39万種が確認されています。


 中でも最も多いのがカブトムシ亜目あもくの昆虫で、コウチュウもくの9割以上を占めています。


 コガネムシも、カブトムシ亜目あもくの一員です。

 コガネムシはもちろん、大スターのカブトムシもコガネムシぞくしています。

 ちなみにクワガタのぞくするクワガタムシも、カブトムシ亜目あもくのメンバーです。


 ◇多種多様なコウチュウもく


 コウチュウもくの昆虫は、地球上のあらゆる場所に棲息しています。


 さすがに海は例外ですが、いない場所を探すほうが難しいかも知れません。


 カブトムシやクワガタは森に棲みますが、一部のゴミムシは洞窟で暮らしています。

 水中で生活するゲンゴロウも、コウチュウもくの一員です。

 サイズも千差万別で、1㍉以下から10㌢以上ある昆虫まで存在します。


 ◇ウ○コを食べる昆虫は日本にもいる


 もちろん、エサも多種多様です。


 カブトムシは樹液を吸いますが、シデムシの仲間は他の生き物の死体を食べます。

 有名なスカラベのように、動物のフンを食べる昆虫も少なくありません。


 日本に棲むセンチコガネやオオセンチコガネも、フンを食べる昆虫です。

 シカだらけの奈良なら公園こうえんでは、大量のフンを片付けるのに活躍しています。


 ◇シメのあいさつ(飛ばして頂いても大丈夫です)


 さて3回に渡ってお送りした今回のシリーズ、お楽しみ頂けたでしょうか。


 実を言うと、今回のテーマは、別の回の前振り(落語で言う『まくら』)に過ぎませんでした。

 それが書いている内にどんどん量が増え、気付いたら独立したシリーズに……。


 はたして、本当に紹介しようとしていたのは何だったのか?


 今後の展開にご期待下さい。


 ◇今回のまとめ


 ☆東南アジアに棲むサカダチコノハナナフシは、体長15㌢程度まで成長する。体重も50㌘に達するが、大きいのはメスだけ。オスはメスの半分くらいしかない。またメスは鮮やかな緑色をしているが、オスは地味な茶色。


 ☆コノハムシのオスは、あまり葉っぱに似ていない。葉っぱに似ているのは、メスだけ。


 ☆サカダチコノハナナフシはコノハムシだが、メスも葉っぱに似ていない。


 ☆サカダチコノハナナフシは、音を立てて威嚇する。また「逆立ち」するように背中を反らし、うしあしで相手を挟み込む。


 ☆ゴライアスオオツノハナムグリは、体長10㌢以上ある。100㌘まで成長するため、世界一重い昆虫と言われることも多い。


 ☆「ゴライアス」とは、ダビデ像の「ダビデ」と戦った巨人。


 ☆コウチュウもくで最も多いのは、カブトムシ亜目あもくの昆虫。全体の9割以上を占める。


 ☆コウチュウもくの昆虫は、地球上のあらゆる場所に生息している。


 ☆コウチュウ目の昆虫は、エサも多種多様。他の生き物の死体や、フンも食べる。


 ◇参考資料


 ぼくらはみんな生きている!

 ヘンで奇妙な昆虫図鑑

 丸山宗利監修 (株)日本図書センター刊


 徹底図解 昆虫の世界

 岡島秀治監修 (株)新星出版社刊


 節足動物ビジュアルガイド タランチュラ&サソリ

 相原和久 秋山智隆著 (株)誠文堂新光社刊


 ヤマケイ情報箱 田んぼの生き物図鑑

 内山りゅう著 (株)山と渓谷社刊


 甲虫カタチ観察図鑑

 海野和男著 (株)草思社刊


 WILD INSECTS

 デジタルカメラで撮る 海野和男昆虫写真

 海野和男著 (株)ソフトバンククリエイティブ刊

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