箸休め はえですよろしくおねがいします ④はえはたべものをつくります

 題材の関係上、気持ち悪い話が多めです。

 お食事中には読まないほうがいいかも知れません。


「もっとキャッチーな題材がなかったのか?」と自問自答している今回のシリーズ。

 前回からは、「アブ」なのに「ハエ」なハナアブに着目しています。


 ミツバチに似たハナアブは、ハエとは思えないほどファンシーです。


 しかもカワイイだけではなく、人間に対する貢献度もはかれません。


 ◇植物が種を作るためには、他の生きものの助けが必要


 花はおしべの花粉がめしべに受粉することで、種を作ります。

 受粉じゅふんしない限り、果実が出来ることもありません。


 種を作る植物のほとんどは、受粉じゅふんを昆虫や動物に委ねています。


 生き物が花の蜜や花粉を食べに来ると、ほぼ間違いなくおしべに触れます。

 この際に付着した花粉が、今度は他の花や自分のめしべに触れるわけです。


 つまり、昆虫がいないと、人間は野菜や果実を食べることが出来ません。


 一応、人間の手でも受粉じゅふんさせることは可能ですが、恐ろしい手間になります。


 ◇ハエは人類に不可欠な昆虫?


 ハチやチョウが花粉を運搬することは、昆虫に興味のない方にも有名です。


 しかしハエもくが重要な運搬役であることは、あまり知られていません。


 ハエもくに所属するグループの内、半数は花粉や蜜を食べることが判明しています。


 しかも色々な場所に棲むため、多様な環境や地域で活躍しています。

 受粉じゅふんさせている植物の種類も、かなり多いはずです。


 ◇北極圏にもいます!


 実際、ハエもくの昆虫は、北極圏でも発見されています。

 北極圏では約4000種の昆虫が発見されていますが、半数はハエもくです。


 ニンジンやタマネギ、マンゴーと言った植物は、ハエもくの昆虫に受粉じゅふんを行ってもらっています。

 最近ではイチゴの受粉じゅふんに、ハエを使う試みも行われているようです。


 ◇ハナアブは花粉の運び屋さん


 ハナアブのハエたちは、ハエもくの中でも代表的な運搬役です。


 彼等の身体には毛が生えていて、蜜を吸った際に花粉が付きやすくなっています。

 また約6000種ものハエがぞくしているため、棲息地も多様です。

 事実、高地にも棲息し、現地の花々を受粉じゅふんさせています。


 ハエのイメージとは掛け離れた活躍ぶりですが、不潔な面がないわけではありません。


 ◇ハナアブもハエ


 ナミハナアブの幼虫は、水の中で暮らしています。


 彼等は水質に無頓着むとんちゃくで、下水溝やゴミに溜まった水にも棲んでいます。

 と言うか、腐った有機物を食べるため、本当にきれいな場所では生きられません。


 見た目は透明なイモムシと言った感じで、2㌢程度まで成長します。


 ◇とっても尾が長い!


 最大の特徴は、極めて長い尾です。


 普段から身体と同じくらいありますが、まだまだ限界ではありません。


 彼等の尾には三つのふしがあり、体長の6倍(!)程度まで伸ばすことが可能です。

 ハエもくの中で最も長く、15㌢(!)まで伸びた記録も残されています。


 この特徴から、ナミハナアブの幼虫は「オナガウジ」と呼ばれています。


 また外国でも目を引いたようで、「Rat-tailed maggot」の異名を与えられています。


「Rat-tailed」は「ネズミの尾」で、「maggot」は「ウジ」と言う意味です。

 確かに長い尾は、ネズミの尾によく似ています。


 ◇長い尾はシュノーケル!


 もちろん、無意味に伸ばしているわけではありません。


 尾の正体は呼吸をするためのくだで、「サイフォン」と呼ばれています。


 先端には空気を吸うための穴があり、水上の酸素を取り入れることが可能です。

 シュノーケルや忍者の使う竹筒たけづつと言えば、分かりやすいかも知れません。


 汚い水は有機物が豊富ですが、酸素が少ないと言う問題があります。

 しかしオナガウジは水上から酸素を取り込むことで、メリットだけを享受きょうじゅしています。


 ◇害はない(ただし、見た目はすごく気持ち悪い)


 尾を伸ばした姿は、お世辞にもかわいいとは言えません。


 と言うか、ものすごく不気味ですが、基本的には害のない昆虫です。

 成虫が人類に貢献していることを考えるなら、成長を見守ってもいいのかも知れません。


 長くなったので、今回はここまで。


 次回は意外な分野で活躍するハエを紹介します。


 だんだんハエのプロパガンダみたいになってきたな……。


 ◇今回のまとめ


 ☆種を作る植物のほとんどは、昆虫に花粉を運んでもらっている。


 ☆ハエは花粉の運搬役として、とても重要。


 ☆ハエもくに所属するグループの内、半数が花粉や蜜を食べる。しかも色々な場所に棲むため、多様な環境や地域で花粉を運んでいる。


 ☆北極圏では約4000種の昆虫が発見されているが、約半分がハエもく


 ☆ニンジンやタマネギ、マンゴーも、ハエに花粉を運んでもらっている。


 ☆ハナアブ科のハエは、代表的な花粉の運搬役。高地にも棲息し、花々を受粉じゅふんさせている。


 ☆ナミハナアブの幼虫は、汚い水の中で暮らしている。


 ☆ナミハナアブの幼虫は、とても尾が長い。しかも、体長の6倍程度まで尾を伸ばせる。ウジの中で最も尾が長く、15㌢まで伸ばした記録も残されている。


 ☆この特徴から、ナミハナアブの幼虫は「オナガウジ」と呼ばれる。また外国でも、「Rat-tailed maggot」の異名を与えられている。「Rat-tailed」は「ネズミの尾」で、「maggot」は「ウジ」と言う意味。


 ☆長い尾の正体は、呼吸をするためのくだ。先端には空気を吸うための穴がある。


 ☆オナガウジは水面から尾を出し、水上の酸素を取り込んでいる。


 ◇参考資料


 ハエ学 多様な生活と謎を探る

 篠永哲・嶌洪著 東海大学出版会刊


 蠅たちの隠された生活

 エリカ・マカリスター著 桝永一宏監修 鴨志田恵訳

 (株)エクスナレッジ刊

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