なんか書く気になったので

風のレッサー風太

臆病と面倒といつもの君


「お腹が空いた」

彼がそう呟く、別にだからと言ってご飯を作りに立ち上がる訳でもなく、私にご飯を作れと遠回しに言ってるわけでもない。彼にとっては「最近どう?」くらいのとりあえず口に出してみた言葉なのだ。でも何も答えないと彼は拗ねる。会話が特になくなんとなく寂しいなと感じた時によく言うからだ。

「そうだね〜今日の晩ご飯はどうしよっか?」

大体こう返す。それだけで彼は満足する。別にめんどくさいと思ってるわけではないがこれが最適解だと思ってからこう答えている。どうせ「なんでもいいよ?」と返事が帰ってくるだろうし、

「今日はそっちが食べたいものにしない?」

「えっ?」

予想外の返事、どうしたんだろう。いつも同じ会話になるから変えたかっただけなのか、私に気を遣ってなのか、彼の方を見てみる。寝転びながら携帯をいじってるが顔は見えた。あ、特に何も考えてないなこの顔。なんなら考えるのがめんどくさいだけか、

「じゃあハンバーグがいいかな」

私は彼が好きな食べ物を言った。別に私も嫌いじゃないし、最近食べてなかったからいいかなくらいに思ったからだ。これから買いに行かなきゃだけどまぁそこまで時間かからないだろうし、

すると彼は重い腰を上げるかのようにゆっくり立ち上がり財布を手に持ち「んじゃ行ってくる」と言って靴を履いて出て行ってしまった。

本当に今日はどうしたんだろう。いつも指先を動かすのですらめんどくさそうにして全く動こうとしないのに、どちらかの誕生日でもないし、なにかの記念日でもないしなぁ...


数分経ちスーパーのレジ袋を持った彼が帰ってきた。ハンバーグを作るにしてはパンパンに詰まっているレジ袋、そこからお菓子を取り出し私に投げ渡す。

「はい、お土産。これ食べながら待ってて」

「あ、ありがと...」

あまりにもいつもと違うので流石に気になった。

「ねぇ、なんで今日はいつもと違うの?」

「え?そうかな?」

「うん。だっていつも別に私の食べたい物なんて 

 聞かないし、買い物も行かないし料理しような

 んて絶対にしないじゃん!」

「うーん、ただそういう気分だっただけだよ?」

「そう?それならいいんだけど、何か隠し事でも

 してるのかと思って」

彼は隠し事が苦手だから、もし隠し事があるならこういう質問ですぐ動揺する。

「残念ながら何もないよ」

うーん特に何も変化はないかぁ、じゃあ本当に気分だったんだな

「そっか、じゃあハンバーグ待ってまーす」

「はーい」

彼は元々料理をする事自体は好きな人間なので手際が良く、あっという間にハンバーグは完成した。


「いただきまーす」

「召し上がれ〜」

味もよくて、いつも私が作っているのより美味しいので若干くやしい。かれは自分の分もよそわず私の向かいに座り頬杖をつきながら私をじっと見てた。どうせそういう気分なんだろう。私は特にそのことには何も言わず食べ終えた。


すると彼は冷蔵庫から買ってきたプリンを取り出してきた。今日はなんとも至れり尽くせりだ。


「本当に今日はいつもと違うね、そんな気分にな

 る時があるんだ」

「まぁね、」

そういって彼は立ち上がり自室に行ってしまった。少し高めのプリンはとても美味しかった。プリンを食べ終えて一休みしていると彼が戻ってきた。彼はまた私の向かい側に座ると小さな箱を取り出した。

「どうしたの?」

「いや、その...これ」

彼から受け取り中を開けると指輪が入っていた。

「渡そうとは思ってたけど、もし断られたら嫌だ

 から少しでも好感度あげようかと思って...」

なるほど、だからこんなに尽くしてたのか。

「だからさ、その...結婚しよう」

なんとも可愛いやつだ。全く...

「別にここまでやってくれなくても私は貴方とし

 か結婚する気ないよ?」

私は彼の頭をそっと撫でた。彼は何も言わなかったが耳が赤くなっていたのを見逃さなかった。

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なんか書く気になったので 風のレッサー風太 @Futa1201

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