23 捜査続行⑦
「あっ」
私は思わずボソッとつぶやいた。
「何? 小春」
「係長、嶋村先輩に電話させて下さい。確認したいことがあります」
「おう、どうした」
「嶋村先輩、香崎です。確認したいことがあるのですが、よろしいですか。ええ、はい。吉村が借りているDVDのタイトルは何でしょうか? 重要なことなんです」
係長も京子も不思議そうに私を見ていた。
「おう、香崎の奴、やけに気合入ってるな」
「急に何かひらめいたみたいな感じですよねー」
「はい、メモを取ります。ありがとうございます。それと、まだ他にも聞きたいことがあります。はい。吉村の自宅にビデオデッキはありましたか? ええ、そうです。VHS専用でしょうか? それと、吉村の自宅に写真とか、あるいはスマホのデータに自撮りの写真があったりしないでしょうか? ええ、写真です。それから、吉村のスマホか、パソコンの検索履歴なのですが。ええ……はい……はい……。吉村でなければ、熊田が検索していたかもしれません。後は、吉村の車の中で見つかったビデオテープですが、おそらくホラー映画研究会の誰かの所有物のはずです。ええ、内容をですね、ええ。はい、わかりました」
「嶋村は何だって?」
「後でまた連絡するということです」
「えー、何ー、小春ー。今の、事件の真相と関係あるのー?」
私は京子の言葉が耳に入ってこないくらいにすごく真剣に考えていた。そして妹の夏子にも電話した。
「夏子、私。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい? こないだレンタルした映画『現実に存在した恐怖の動画』のことなんだけど。うん。そのストーリーを教えてくれない? うん、そう。あー、ストーリーというよりは、設定ね。うん、うん。なるほど。ちょっとメモ取るから、もう一回お願い。うん、うん。わかった、ありがと」
「おう、香崎、どうなんだ? 何かわかったのか?」
「いえ、まだ何ともいえません。嶋村先輩からの連絡次第です」
「えー、小春ー、何なのよー」
私は嶋村先輩から連絡が来るまで待機したいと係長に申し出た。係長は許可してくれたので、京子と三人でティータイムを取ることにした。
「香崎、教えてくれ、何がわかりそうなんだ?」
「はい、何か、すごく複雑というか、この事件の真相が見えてきた気がするんです」
「おう、そうか。刑事課に配属されてまだ間もないが、それでいいぞ、その意気だ」
「はい、ありがとうございます」
嶋村先輩から電話がかかってきた。
「はい、香崎です。はい。やっぱりそうでしたか。はい、はい。わかりました。はい、はい。それも、はい。そうですか、わざわざ鑑識班が、はい、ありがとうございます。それも、私が思った通りです。はい、はい。戦争ドキュメンタリーの第9話ですか。はい、はい。ありがとうございました」
「おう、どうだった?」
「はい、係長。この事件の謎が解けました」
「えー! 小春、マジで!」
「本当か!」
「はい、この事件の謎解きをします。呼んでほしい人が何名かいます」
「おう、わかった」
「えー、全員呼んだらいいんじゃないですかー」
「いや、そこまで……」
「おう、そうだな全員集めよう」
「いや、そこまで……」
「大丈夫だ、ここじゃ狭いから、宴会場を借りよう」
「いや、そこまで……」
係長は部屋から出て行った。京子はにやけていた。
「んーんっー、失敗できないわねー、小春ー。んっひっひっ」
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