第11話 ポンコツ転校生と深夜アニメの時間
男子「(お風呂上がりの佐藤さんに服を着てもらうことが、こんなに大変だと思ってなかった。土下座の末なんとか、部屋着を着用してもらえることになった。まぁ胸元がぱかっと開いたそのTシャツはリラックスしている証でしょう。ブラジャーを付けてないせいで、乳首がTシャツを押し上げているが、こればかりは注意するとセクハラな気がしている。自分の部屋なのだから、気楽にさせてあげないと。僕の視線が勝手に透けて見える乳首に向かってしまうけれど、そればかりは許してください)」
女子「ねぇ今日はこのポスター、『異世界で幼馴染と魔王討伐します』のアニメだよねぇ。楽しみだよねぇ」
男子「佐藤さん、このアニメ知ってるの?」
女子「このアニメを知らない高校生はいないよぉ。だって国民的アニメだよねぇ」
男子「巨人が出てきて、閉された空間で魔王との死闘を幼馴染と助け合いながら繰り広げる。まさにアニメの最高峰と言える。僕にアニメの面白さを教えてくれた大切な作品でもあるんだ。そして何より、メインヒロインの西沢ミアちゃんを演じる声優の
女子「そうなんだぁ。アニメは見てるけど、声優さんについてはそこまでかなぁ」
男子「IROAさんは、演じるだけじゃない。オープニング曲も彼女が歌い、作詞まで担当しているんだ。あとはファンとの交流を少しは持ってくれれば嬉しいのだが。今のところ公開されている写真は口元、耳、鼻のみ。超絶可愛いのは間違いないと思う。そんな中、僕は彼女が出ているアニメのシーンだけを切り取り、オリジナル総集編を作ったんだ。佐藤さん見たいよね? 見てくれるよね? よし、分かった。そこまで言うなら、一緒に見よう! 今からパソコンを開くから少し待って! キタキタキタよ!」
女子「私まだ一言も返事してないよぉ。おぉ動画サイトで公開してるんだねぇ。100000pvってすごいよねぇ」
男子「なんとこの動画は、IROAさんが所属するアイモエンタープライズに連絡し、許可を得てから公開してるんだ。世界中の人と、この感動を分かち合うことが出来て僕は嬉しい。とくに、アイモエンタープライズさんの協力的な姿勢には感動した!」
女子「山本君って情熱がすごいよねぇ」
男子「10秒前……!」
女子「……っえ?」
男子「カウントダウンだよ! アニメの時間! それから、コレを!」
女子「これは、なにぃ?」
男子「ペンライトとタオル。IROAさんは赤色って決まってるんだ。……5秒前・4・3・さあ始まるよ! このオープニングに僕の青春が詰まっているんだ! さぁ一緒に!
――ぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!
――ぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!
――おっいおっいおっいおっい、IROA!!!!!
――ぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!
――ぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!
――IROAちゃーん!!! 最高ー!!」
女子「……て、リズムに合わせて叫びすぎだよねぇ。今度は、アニメ見ながら、笑いすぎだよねぇ。ええええええええっ、笑ってたかと思ったら、ここで泣くのぉ? 感動のシーンだったかなぁ。……なんか山本君って人生楽しそうだよねぇ。あぁやっぱりっていうか、もう想像通りだけど、最後のエンディングは一緒に歌うんだねぇ。アニメが終わったら、ネットで感想をアップするんだぁ。忙しそうだねぇ。そろそろ私、寝ようかなぁ。おやすみなさい。って私の声は、全然聞こえてないよねぇ。何かに熱中できるって羨ましいよぉ」
男子「(完全に。完璧に時間を忘れていた。同時に佐藤さんの存在を忘れていた。やってしまった。寝ている佐藤さんを起こさないように、静かに僕は床で寝ることにしよう。布団を取り出して、電気を消す)」
ガタガタ――
男子「(……っ? 隣の部屋から久しぶりに物音がした。沙織か。少しは顔見せろよ)」
ギ、ギギー
妹「(『異世界で幼馴染と魔王討伐します』の放送を見届けた。ネットの感想も一通り読んだ。部屋から物音を立てないように出る。お兄ちゃんはキモオタだから、今日のアニメも見ながら叫んでいた。まぁ少しは嬉しぃ……、じゃなくて微塵も嬉しくない。キモい! それにしても、昼に出会った人は誰だろう。夜でもお兄ちゃんの部屋からその人の声が聞こえてきたけど……。あんな可愛い子が、まさかお兄ちゃんの恋人? ない! ない! ない! 絶対にそれはあり得ない! お兄ちゃん、モテる要素ゼロだし!)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます